12/29 C95「つよいこ」

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    12/29コミックマーケット95

    配置 西1ホール れ30b「つよいこ」(※サークル名が以前とは変わっております)

     

    ☆無配ペーパー以外はすべて18禁です☆

     

    ☆新刊

    「まだ他人同士ですか」(「他人同士」「誓約のうつり香」MIX番外編)18禁 500円

    最近物思いに耽っている暁。彼を心配するもののうまく聞き出せずもどかしい諒一だが、「他社から仕事をオファーされて……」と思わぬ告白を受けて動揺し……? という内容で、チカや南も混ざってくるわいわいラブエロです。2カップルぶんのすけべがあります。

    ※書店委託はコミコミスタジオ様にお願いしています。電子版はフロマージュ様にお願いしています。

     

     

    ☆既刊(すべて18禁、商業誌の番外編です/在庫僅少もあります)

    「さよなら天国」(リンクスロマンス『毒の林檎を手にした男』番外編)400円

    「Re:他人同士」(『他人同士』)1000円

    「オメガの休暇」(『オメガの血縁』)500円

    「あなたのすべては俺のすべて」(『黒い愛情』)300円

    「夏の大人同士」(『大人同士』)300円

     

     

    ※ブリリアントプリン様より好評発売中のリーディングCD「今宵、義兄とアバンチュール」の甘いSSペーパーを先着順でお配りします。

     

    ※本人直参ですがひとり対応のため、途中もしも混雑することがありましたらご容赦くださいませ。

     

    ※朝一番の高額紙幣はご遠慮くださいませ。

     

    ※サンプルは折り畳み記事に。

     少し前から予兆はあった。出会ったときから、底抜けに明るくて強靱で、笑えるほどにタフで懐の深い田口暁の口数が少ないと感じた瞬間、浅田諒一は目を眇め、彼の様子を慎重に窺うようにしていた。奇妙な縁があって同居を始めてもう四年だ。たいていのことなら暁の表情を見ればわかる。バカがつくほど正直な男だ。なにかを考え、迷っているような暁を見続けて一週間めの夜、ようやく諒一は「どうした」と切り出した。
    「最近なんかあったのか」
    「え、なんですか突然」
    「おまえさ、いくらなんでも四年一緒にいりゃわかるんだよ。辛気くさい顔の理由、いい加減に吐け」
    「うわ、刑事さんみたいですね」
     土曜の晩の食卓で、暁は苦く笑う。顔を合わせた当初はただ若さだけが売りの男だと思っていたが、二十八歳ともなると少し違う。ふとした面持ちや仕草にある種の大人らしさが加わり、もともと暁に備わっていた骨っぽさが魅力を増すのだ。
     今年ももう十二月だ。中旬の寒さはかなりのもので、ふたりが住むマンションはしっかり暖房が効いている。年末進行の残骸を引きずっている諒一は土曜の今日も夕方まで会社で仕事をしてきたが、平日よりは早めに切り上げて自宅に戻ってきた。素直に言うと悔しいから口にはしないが、それなりに暁のことを案じている。なにか困ったことがあればすぐに言う奴なのに、今回はなかなか頑として口を割らない。
     案外強情なんだよな、こいつ。
     内心ため息をつき、熱々のクリームシチューを口に運ぶ。ホワイトソースから丁寧に作った暁特製のシチューはこの時期よく食卓に出てくる。彼の故郷である北海道富良野から直送されてくる新鮮な野菜や肉を惜しみなく使った温かいシチューは諒一にとってもこの四年で好物になった。とくに大きめにごろごろした野菜がいい。ジャガイモはほくほくしているし、ニンジンは甘い。タマネギは蕩けるようだし、肉に至っては噛み締めるほどに味が出る。
    「第一次産業は強いな」
    「うん。今年は好天続きだったし、台風も免れましたしね。お米も美味しいでしょ?」
    「美味しい。北海道ブランドって年々レベル上がってるな」
     茶碗に盛られた新米はピンと立っていて艶々だ。もっちりしていて甘く、なんにでも合う。それまではさっぱりした米が好きだったのだが、暁の実家から送られてくる濃密な米がすっかりハマってしまった。白菜とキュウリの浅漬けも暁の手製だ。ホントよくやるよなと半ばあきれつつも、胃袋をがっしり掴まれている身としてはなにも言えない。
     シチューの付け合わせは炊きたての米と決めていて、明日の朝まで余っていたらパンと食べるのが諒一流だ。昼飯を抜いて仕事をしていたので、シチューもごはんもお代わりをし、旺盛な食欲で平らげていく。
    「そんで、なんだ。悩みってのは」
    「いや、悩みっていうか……はは、諒一さんには隠し事できないですね」
    「当然だろ。おまえ、顔のど真ん中に悩んでますって書いてあるような男だろが」
     白菜をパリパリ噛み砕きながら言うと、暁はちょっと困った顔をするが諒一とゆっくりと食事を終え、食後に熱いほうじ茶を淹れてくれた。
    「じつは……俺が少し前からブログで写真を掲載してるのは知ってますよね」
    「知ってる。仕事でボツになったやつとか趣味の写真とかだろ。結構見てるけど」
    「ありがとうございます。あれをね、その……」
     やや言いづらそうに暁は鼻の頭をかき、ほうじ茶をずず、と啜る。
    「書籍化しないかって言ってくれた出版社が出てきて」
    「どこの」
    「メディアフロントっていう出版社です」
    「うちのライバルだろそこ。……メディアフロント? どっかで聞いた名前だな。仕事上じゃなくてプライベートで」
    「お知り合いでもいるんですか? 他社さん同士でも編集さんのお付き合いってあるんですか」
    「まあな。取材現場が重なることもあれば、うちを辞めて他社に移る奴もいるしさ。メディアフロント……メディアフロント……で、どこの編集部から声がかかったんだ」
    「『月刊プレイヤーズ』です。担当編集者は南千宗さんという方」
    「南……ちひろ……」
     しばし腕組みして考え込み、パッと頭の中にド派手な銀髪の男が浮かび上がる。
     そうだ、間違いない。東京中の男を唸らせるSMプレイヤーとして名高いチカの恋人は、確かメディアフロントの編集者だったはずだ。
    「もしかして、チカさんの恋人か」
    「チカさん? こ、恋人?」
     要領を得ない暁に「じつはさ」と切り出す。
    「二丁目のキブラ、あるだろ。あそこの常連にチカさんってえらいいい男がいるんだよ。俺はたまにしか会わないけど、一度見たら絶対忘れられないほどの美形だ」
    「諒一さんよりも?」
    「俺は俺だろが。まあ、そのチカさんってのがちょっと変わった仕事をしていて、六本木の男性専門SMクラブで有名なプレイヤーとして数多くの奴隷を抱えてるんだよ」
    「奴隷」
     突拍子もない展開に、平々凡々たる暁は目を丸くしている。その顔が可笑しかったから、諒一はくすりと笑い、ほうじ茶で喉を潤す。
    「そういや一度だけ恋人に会ったことがあるな。ふたりでキブラに来てたことがあった。ガタイがよくて柔道部出身の男前が南さんだ。ふたりともおまえの一個下の二十七……だったはずだぞ」
    「えっ、そうなんですか。一度だけ南さんにお会いしましたけど、年下さんなんだ。あ、でも確かに爽やかな感じのいいひとだったな。……ていうか、ええと、そのチカさんってひとと南さんも俺たちみたいに同性の恋人同士ってことですか」
    「そう。あっちは高校時代からの縁があるらしい。なんでもチカさんがめっぽう惚れ込んでいて、南さんは押されっぱなしらしかったけど、もう一緒に暮らして何年になるんだ? 二年、三年か? 高校時代からの付き合いも含めたら長いカップルだよな」
    「俺だって、諒一さんともう四年も一緒にいるんですよ」
    「変なところで張り合うな」
     胸を張る暁に苦笑いしてしまう。
     メディアフロントと言えば、諒一が勤める央剛舎と比肩しうる大手総合出版社のひとつだ。とくに、スポーツ誌の『月刊プレイヤーズ』は熱い記事が多く、とりわけ格闘技方面で人気がある。央剛舎でも『アワード』というスポーツ誌があり、同僚の斉藤真起子が奮闘していて、『いつかあのプレイヤーズをぶっ潰したいのよね』と鼻息荒く言っていたことがあったっけ。
    「ブログを介して南さんに声をかけられたのか」
    「そうです。以前から俺の撮り方が気に入っていて、『プレイヤーズ』でも撮らないか、個人写真集を出す前提でって持ちかけられて」
    「すごいじゃねぇか」
     素直に感心してしまう。あの『プレイヤーズ』に目を留めてもらえるほどの腕前になっていたのだ、暁はいつの間にか。つねにそばで仕事をしていてその成長は冷静に見守ってきたつもりだが、いい感じに育ったところを他社が黙っているはずがないかと思うとやはり落ち着かない。目の前で鳶に油揚げをさらわれる気分だ。
    「それ、いつぐらいの話だ」
    「一か月……になりますかね。最初はメールだけでやり取りしていたんですが、先週やっと南さんと直接お会いして。めちゃくちゃ熱心に口説かれました。ぜひ『プレイヤーズ』の専属カメラマンになってほしいとも言われて」
    「マジか」
     それは大事だ。
     暁は建前上フリーランスで、どこの事務所にも所属していない。諒一と出会ったときから自然と央剛舎で仕事をしてきたが、本来どこの仕事でも好きに引き受けられる立場だ。
     掛け持ちをしているカメラマンは多いけれど、雑誌につくカメラマンにはある程度の守秘義務も発生するので、大手の一社と付き合いを深め、その他は細々とした仕事を都度受けるというのがセオリーだ。ライバル社同士の人気誌を同時に引き受けるという話はほとんど聞いたことがない。それはフリーのライターでも編集者も同じことで、自分のテリトリーをひとつ決めたらそこをメインにし、他社とは顔を繋ぎながらもおおっぴらに掛け持ちを公言することはしない。
     やはり、○○誌でメインカメラマン、メインライターという肩書きがフリーランスにとっても大事なのだ。一社で実績を築けば、いずれは今回の暁のように他社から声がかかり、引き抜きの可能性も生まれるわけだが。
    「引き抜きかぁ……結構堂々と来たな。うちで仕事してることは言ってんだろ?」
    「言いました。新人時代から央剛舎にお世話になっているので、って。南さんもそこはご存じみたいで、ギャラもアップするからぜひ来てほしいって仰っていて……」
    「なるほどな」
     暁が揺れるのもわかる。メディアフロントと央剛舎は雌雄を決する仲だ。互いに競い抜き合い、いまのところ互角の勝負といったところだ。公称部数ではわずかに『プレイヤーズ』が『アワード』よりも下回っているので、ここでてこ入れしたいつもりなのだろう。
    「南さん、すごくいい方でした。熱心だし、俺の写真はくまなく見ているって。央剛舎で使ってもらった写真も全部見ていて、そのうえで『プレイヤーズ』のメインスタッフになってほしいって強く請われて」
    「ふぅん……」
     バリバリの体育会系で明るい雰囲気の南が熱烈に暁をかき口説く場面を想像して思わず顔をしかめる。ああ、煙草が吸いたい。禁煙して半年以上が経つのだが、こういうときついつい手がうろつき、テーブルのどこにもない煙草のケースを探してしまう。渋面を作りながらぬるくなってきたほうじ茶を飲み、「おまえはどうしたいんだよ」と問うてみた。
    「暁自身はどうしたいんだ。『プレイヤーズ』に行きたいのか?」
     央剛舎でだって、暁は重宝している。諒一のいる部署、隔週エンタメ誌『エイダ』でも仕事を振っているし、『アワード』でも毎月かならず撮りを任されている。だが、いまより好待遇で迎えるからぜひにと言われたら、フリーランスならば誰しもこころを動かされるだろう。公称部数はさておき、『プレイヤーズ』の最近の熱のこもった記事には諒一も唸っていた。そのうち大化けしそうな予感があったのだ。だから、あの斉藤も息巻いていたのだろう。雑誌が低迷している時代において、ライバル誌は徹底的に潰して一強と名乗りを上げたいところだ。
    「行きたいのか、『プレイヤーズ』に」
    「……迷って、ます」
    「ギャラの面なら俺から交渉する。うちだっていまおまえに抜けられたら困る」
     断言すると、暁は途端にほっとしたような顔だ。
    「ほんとうにそう思ってくれてます? 俺が必要ですか?」
    「だから毎月仕事振ってんだろ」
    「いや、それはそうですけど、なんていうかもうちょっとそのやさしい言い方があるんじゃないかとか期待しちゃだめですか」
    「あのなぁ、俺を誰だと思ってるんだ」
     苛々とした顔で立ち上がり、諒一は食べ終えた皿を重ねてシンクに運ぶ。
    「甘ったるいことととは無縁の性格だってよく知ってんだろ。おまえはどういう言葉が欲しいんだよ」
    「それを俺が言っちゃったら強制じゃないですか。そんなのだめです。諒一さん自身から出てくる言葉じゃなきゃ」
    「少女漫画みたいなやり取り期待してんなら恋愛ドラマでも観てろ」
     すげなく言い、皿を洗い出す。家にいられるときは、皿洗いは率先してやるようにしていた。ソファにふんぞり返ってなんでもかんでも暁にやらせるほどバカ殿ではない。
     すると暁もトレーナーの袖をまくって隣に立ち、濡れた皿を清潔な布巾で拭っていく。諒一が家にいるときの連携プレイももうおなじみだ。
    「じつは、来週に南さんともう一回会う予定なんです。夕食を食べがてら、ざっくばらんに話そうってことになって。俺が新人時代の砂漠の写真も見たいんですって」
    「ま、いい経験じゃないのか」
    「止めてくれないんですか」
     その声に拗ねた調子を聞き取ったので、諒一はせせら笑い、湯の出るレバーをしっかりと上げる。
    「おまえももう二十八歳だろ。自分の進路ぐらい自分でしっかり考えろ」
    「どんなことも諒一さんに相談したいです」
     バカだなと笑いたいぐらい素直な響きを滲ませる暁だからこそ、最後の最後で突き放すことはできないのだが。


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