2017年8月の新刊「オメガの血縁」

0

    「オメガの血縁」(リブレ スラッシュノベルズ)イラスト:森原八鹿様

     

    なぜ、自分だけオメガなのか。なぜ、兄弟なのか――

    オメガ保護法の一環で一流企業に勤める秋生は、ある雨の日ずぶ濡れの男を拾う。

    それがかつて仲の良かったアルファの弟だと知ったとき、

    本能的な熱に襲われてどうにもならなくなり…!?

    森原八鹿様の美しい挿絵でスラッシュノベルズより発売です!

     

    折り畳み記事に冒頭部分を掲載しています。試し読みにどうぞハート

     

     

     

     

    「……っ、ん」
     吐いた息が、熱い。くちびるを焼くほどに自分の息が熱いことに気がついて、澤野秋生はびくりと身体を震わせ、今度は細く息を吸い込んだ。できるだけ、慎重に。
     だけど、それは先ほどよりも熱を上げていて、喉を焼き、肺を炎で満たし、すみやかに全身を燃え立たせる。秋生の意思など無視して。
     耐えがたいほどの疼きを宿した指先で秋生は自分の両肩を掴み、身体を丸める。こんなのは嫌だ。自分が自分でなくなってしまう。身体を揺すぶってなんとか奥のほうでわだかまる熱――欲望そのものを追い出そうとするのだが、どうしてもうまくいかない。
     どうしよう、どうしたらいい? 早くここを逃げ出さなければ。怪我をしても、逃げなければ。いまここに抑制剤があったら。身体の中を犯す熱をなだめることができるのに。
    「――あ、っ、あぁ……」
     悲鳴みたいな喘ぎ声が聞こえてきて、いたたまれない。
     秋生は両手を縛られていた。起き上がれば歩くことはできるかもしれないが、欲情しきった身体ではそう遠くへは行けない。たぶん、ベッドを下りた瞬間に崩れ落ちてしまうだろう。
     必死にあたりを見回すと、ベッドサイドのテーブルに、見覚えのあるちいさなプラスティックの容器が視界に入った。
     白くつるりとしたパッケージの片隅には、無愛想に「抑制剤」と黒字でプリントされている。それがなければ呼吸困難に陥ったときに使う吸入器のようにも見える。けれど、その横に赤い文字ではっきりと書かれていた。

    ●オメガ専用――医師の診断なく使用を禁ずる

     オメガ。自分というのは澤野秋生という名前の男である前に、オメガというレッテルを貼られてこの二十五年を生きてきた。見かけは普通のひととなにひとつ変わらないが、体内の構造は独特だ。そのせいで、オメガ性に生まれついたものはその瞬間から差別を受け、忌み嫌われ、嘲笑われたうえに手ひどい扱いを受けてきた。
     ――なぜ、こんな身体に。
     何度奥歯を噛みしめても、身体の中に沸き起こる劣情は暴力的だ。おそるおそる視線を下に向けると、スラックスの上からでもはっきりとわかるぐらい自分のそこが硬くふくらんでいる。抑制剤を使えば、一時的ではあるもののこの場をやり過ごすことができるのだが、隣のベッドで秋生の同僚を犯している男がそれを許さないだろう。
     抑制剤は、オメガである同僚や秋生があまりにも自身を抑制できず、暴力沙汰にならないように用意しているのだと考えられる。
     汗だくの男が同僚の腰を掴みながら振り向いた。
    「次はきみのばんだよ、澤野くん。身体を熱くして待っているといい」
    「く……っ」
     嫌な言葉に、秋生は顔を強張らせた。彼はアルファ。最下層にあたるオメガの対極に位置する、いわばエリート層だ。恵まれた資質を持ち、裕福な人間も多い。オメガは彼らアルファの餌のようなもので、その欲を満たすためにいつでも身体を差し出さなければいけない。それがほんとうに嫌なのであればまだ諦めもつくのだが、意思とは裏腹に身体の熱は暴走し、いますぐにでも男に貫かれたがっている。何度だって射精して、最後には凄まじいドライオーガズムを味わって精液でべたべたになったシーツに倒れ伏すのがオメガという生き物だ。
     抑制剤のボトルを睨み据え、ぎゅっと瞼を閉じた。こんなもの、なんの役にも立たない。その場しのぎで抑えたって、自分は発情する。一度昂ぶったらもう獣同然のセックスを耽溺しないと満足しない。
     最低だ。
     秋生は頬にこぼれる涙を拭いもせず、ただ歯噛みをしていた。身体中が熱く痺れて、息が荒くなってしまう。彼が同僚を犯し始めてから、もう三十分は経つ。その間、同僚が泣きながら何度達したことか。次は自分のばんだと思うと、背中を汗がつうっと伝い落ちていく。
     早くここを出なければ。男を殺してでも逃げたい。
     そうとわかっていても秋生は涙が止められなかった。この身体が、この血が呪わしい。
    「ああ、いいぞ、締め付けるんだ。首を絞めたらもっといいかもしれないな。……そう、そうだ。おまえの中にたっぷり出してやろう」
     卑猥で悪辣な声を意識から追い出したかった。
     男の笑い声。目眩のするような劣情。同僚の啜り泣く声。
     ……吐き気がする。

     

     

    (続きはノベルズにて!)


    関連する記事
    コメント
    コメントする








       

    profile

    書いた記事数:72 最後に更新した日:2018/10/12

    calendar

    S M T W T F S
     123456
    78910111213
    14151617181920
    21222324252627
    28293031   
    << October 2018 >>

    selected entries

    categories

    archives

    recent comment

    links

    search this site.

    others

    mobile

    qrcode

    powered

    無料ブログ作成サービス JUGEM