温泉、で?(「くちびるに銀の弾丸」番外編)

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    「へえ、いい部屋だなあ。もしかしてこのまま庭に出られるの?」

    「お履物を用意してございますから、ぜひどうぞ。ちいさな庭ですが、手入れしていますので」

     穏やかに微笑む眼鏡の男が手招きしてくれるので、使い込んでくたくたになった革のボストンバッグを置いた澤村朗は「水嶋さん、おいでよ」と背後を振り返った。

     磨きをかけた年代物の室内に見とれていた水嶋弘貴が頷き、背中越しに丹誠を尽くした庭をのぞき込む。

    「あちらが萩で、その奥には紅葉が植わっています。うちは秋から冬にかけてのお客様が多いので、庭もその季節に向いたつくりをしているのですが、いまの時期も青葉が綺麗なんですよ」

     三十代と思しき男は篠原遼路と名乗り、若いながらもこの旅館の主人を務めていると言う。細身の身体にぴしりとした和服が似合う、都会ではちょっと見かけない落ち着いた雰囲気を持つ男だ。

    「いいですね。やっぱりこういうところに来ると空気が違う。静かだし、自然の色が目にやさしいですよ」

    「そう言っていただけると嬉しいです。お茶をお入れしましょうか」

     水嶋の言葉ににこりと笑い、着物の裾を綺麗にさばく男の足が真っ白な足袋に包まれているのを見て、澤村は内心ちょっと不謹慎な気持ちを抱いてしまう。いまどき、足袋が似合う男というのもめずらしい。

     ――水嶋さんが足袋を履いたらどういう感じかな。

     七月のまぶしい午後の陽射しが照らす庭が見える居間に戻り、渋い色合いの座卓できちんと正座する恋人をちらりと横目で眺め、思わず口元がゆるんでしまった。Tシャツにジーンズという軽装の自分とは違い、プライベートでもプレスのきいたボタンダウンシャツと焦げ茶のパンツというきちんとした装いの男は、どこにいても目を惹く存在感だ。派手というのではないけれど、研ぎ澄まされていて、芯のとおった色気が感じられるのがいい。

    「……なに笑ってるんだよ」

    「いやいや、べつに。こっちのこと」

     お茶を入れる準備をしている若旦那に聞こえないような小声とともに肘でつつかれたが、いま考えたことは内緒にしておこう。

     由緒正しい日本旅館に来たからには浴衣で過ごす時間が長いのだから、そう焦ることもない。

     べつに白足袋じゃなくても、浴衣と裸足だけで十分色っぽく見えるんじゃないだろうか。

     慌ただしい毎日を送るなか、水嶋とここ金沢に来ようと決めたのはつい一週間前のことだ。

     ここ最近、うまい具合に仕事が片付き、せっかくだから時間の空いた週末にどこかに出かけようという話が持ち上がったのだが、さすがに急すぎて海外は無理だった。そこで、かねてから水嶋が「行ってみたい」と言っていた金沢に出かけることにしたのだ。

     北陸にあるこの町は山と海に挟まれ、自然に恵まれているうえに垢抜けたイメージだ。東京のように、無造作に多くのひとが入り乱れて最新の流行を築く場所とはまったく異なり、独自の文化を築いてきただけあって色味を抑えた街並みは美しく、ずっと昔から豊かな時間が流れていたのだと実感させられる。

     水嶋も自分も東京生まれだから、こんなふうに自然がすぐそばにある場所にとことん弱い。今回選んだ「志乃や」という老舗旅館は、金沢の中心街からさらに四十分ほど山のほうに入ったところにある。聞こえてくる音といえば沢の清らかな流れと、土曜の午後を目一杯楽しもうという近所の子どもたちがはしゃぐ笑い声ぐらいのものだ。古くから名の知れた旅館らしいが、本格的なシーズン前とあって部屋が空いていたらしい。急な予約でも快く引き受けてくれた。

     東京のマンションにはない太い梁や綺麗に張った障子を興味深げに眺める澤村たちの前で、篠原は慣れた手つきで着物の袂を押さえ、茶托に載せた湯飲みを差し出してくる。

    「東京からいらっしゃったんですよね。金沢は初めてですか。こちらにはお仕事で?」

    「ええ、半分仕事で、半分は遊びで」

     普段は冗談ひとつ言わない水嶋も、ゆったりした温泉宿にやってきたことで気分がほぐれているようだ。主人が同じぐらいの年だというのにも、親しみを覚えるのだろう。湯飲みを手にし、「いただきます」と顔をほころばせている。

     澤村も彼に倣い、熱いお茶をごくりと飲んだ。いい茶葉を使っているらしく、爽やかな香りが部屋中に広がっていく。

    「こう言っちゃなんですが、まだお若く見えるのにこんな歴史のある旅館の旦那さんってすごいですよね」

    「いえいえ、古いだけですよ。私が主人になったのもちょっと事情がありまして、それこそ半分は仕方なしに」

     苦笑いする篠原に興味を覚えて、「どんな事情ですか?」と訊ねると、「こら」とシャツの袖を引っ張られた。水嶋がしかめ面をしている。

    「失礼だろ、そんなこといきなり聞いたら」

    「構いませんよ。じつは私も、以前は東京におりました。出版社に勤めていまして……」

     続けて篠原の口から出た名前は、澤村も水嶋も知っている大手出版社だ。ふたりが手がけるゲームソフト『ぼくらのおやすみ』を記事にしてもらったこともある会社に、「あそこにお勤めだったんですか」と言うと、篠原も「ご存じなんですか?」と目を丸くする。

     そこで自分たちの身元を明かすと、「ああ」と篠原の顔がほころんだ。

    「そのゲームなら私も遊んだことがあります。『ぼくおや』って、いままでにないタイプのゲームでしたよね。毎日三十分はかならず遊んでましたよ」

    「ほんとうですか? そうか、……うん……、ありがとうございます。そういう声ってなかなか聞けないから、嬉しいですよ」

     仕事ならいざ知らず、初対面の相手に笑顔を向ける水嶋というのもめったに見られない。それもそうだろう。いま、篠原が言ってくれた言葉は、まさに彼が求めた『ぼくおや』の姿そのものだからだ。

     ちいさな村でのんびりした暮らしを楽しむ『ぼくおや』というシミュレーションゲームには、これといったエンディングがない代わりに、他愛ない日常のドラマがいくつも仕掛けられている。そのどれもが取るに足らないもので、村人との日常的な会話だったり、お買い物だったり、お手伝いだったり、季節のイベントだったり。

     一気に何時間もぶっ続けで遊ぶゲームとは対局にあるスローペースの世界観だが、ひとたびはまると毎日ゲーム機の電源を入れるのが楽しみになるという、ある種の癖を持っている作品なのだ。

     ユーザーに飽きられず、毎日かならず三十分遊んでもらえるような内容にする、というのは、水嶋が『ぼくおや』制作当初から掲げていた目標だ。

     それをいま目の前で聞かせてもらえているのだから、彼が喜ぶのも当然だ。『ぼくおや』の広報を担当している澤村としても嬉しい言葉だ。

    「あれをつくってらっしゃる方でしたか。お会いできて光栄です。それでは、今夜の食事はいつもより張り切らせていただきますね」

    「楽しみにしています。志乃やさんの食事って有名なんでしょう? 前にここに来たことがある同僚から紹介してもらったんだけど、そいつも食事がめちゃくちゃ旨かったって言ってましたよ。あ、でも、そういやめっぽう怖い板前さんがいるって話だったけど……」

    「澤村、ばか、余計なこと言うな」

     またも小声で叱られたが、篠原の耳にはすっかり聞こえていたらしい。

     くすくすと笑い、「いいえ、お構いなく」と言う若旦那に、澤村も「すみません」と頭をかいた。

    「おっしゃるとおり、うちの板前には愛想というものがなくて……ですが、料理はとびきりですから、楽しみにしていてください」

     もう一杯お茶を入れてくれた篠原が、「お食事前にお風呂に入りますか」と訊ねてきたので、「ぜひ」と返すと、藍染めの浴衣と丹前をそろえて出してくれた。

    「内風呂のほかに露天の岩風呂と信楽でできた陶風呂、大浴場がございます。今夜はほかに二組のお客様がいらっしゃいますが、お着きになるのは夜遅くと聞いていますから、どの風呂も気兼ねなくお入りいただけますよ。――それでは、ごゆっくりどうぞ」

     控えめな笑顔を向こうにぱたんと襖が閉じたとたん、なんとはなしにふたりして顔を見合わせてしまった。

     妙に照れくさい。

     ふたりで旅行するのは今回が初めてじゃないが、温泉といういささか淫靡な妄想が楽しめる場所にやってくると、なんだか勝手が狂ってしまう。子どもの騒ぐ声もいまは聞こえず、さわさわと風が木々を揺らす音が静かに響くだけだ。

    「……参ったな。なんか照れるよ」

     ふと笑い出すと、水嶋もはにかみながら「うん」と頷く。

    「普段、こんな静かな場所とは縁がないからな。一日中灯りが点いたビルの中にいると時間の感覚が狂うよ。……やっぱり、たまにはこういう場所に来るのが大事なんだよなぁ。時間が正しく流れてる気がする……」

     ぱたんと畳に寝転がる水嶋を横目に、澤村はお茶請けのもなかをぱくりと頬張る。

    「ん、ウマイな、これ」

     基本的に甘いものは苦手なのだが、このもなかのこしあんはさっぱりした甘さで、日本茶によく合う。

     小振りの和菓子をものの二口で食べ終え、もうひとつ、と手を伸ばすと、再びシャツを引っ張られた。振り向けば、さらさらした髪をかきあげながら、水嶋がなにかを期待するような目つきで見上げている。

    「俺も食べたい」

    「俺を?」

    「ばか、違う」

     ほんとうにばかな会話だ。吹き出しつつ、可笑しそうにしている水嶋に覆い被さった。

    「澤村……」

     微笑みを残すくちびるに自分のそれを重ねて、軽く抱き締めた。

     いつもなら、まだ昼間なのに、と怒られるところだが、しばし現実から逃避している楽しさに水嶋も浮かれているのだろう。ためらいがちに背中に両手が回ることに嬉しさを感じてしまうのだから、自分というのもずいぶんと甘くなったものだ。

     くちびるをぺろりと舐めると、「甘い」とちいさな笑い声が響いた。

    「もなかが食べたいって言ったのに」

    「いいじゃねえかよ。俺を食わせてやるよ」

     自分の言葉のばかさ加減にふつふつと笑いがこみ上げてくるが、水嶋の掠れた笑い声を聞いてしまうともうだめだ。

     初めて抱いたときには、こんな熱を持った男がいるのかと驚いたものだっけ。それまで女しか抱いたことのない自分にとって、同性である水嶋の硬質な色気というのは特別きわどいものに映った。破れそうで破れない壁を感じて、なんとしてでもこの男を抱いてみたいと躍起になったのだ。

     女なら掃いて捨てるほど抱いてきた。いくらでも替えが効くと本気で思っていた。

     だが、水嶋はそうもいかない。一見地味な『ぼくおや』が内包するあざやかな世界観と同じように、手強い彼の中にある脆さと強さが複雑に噛み合う歯車の動きに囚われてしまった以上、ほかに目を移すことなどできるか。

    「……ん……」

     隙間なくくちびるを触れ合わせて、水嶋が苦しそうな声を漏らしても舌を絡め、ときおりきつく吸った。

     少し強引なほうが感じるとわかっているから、息継ぎさせる余裕も与えてやらなかった。

     背中に回る手が、強く食い込んでくる。しっとりと濡れたくちびるの表面は熱っぽく、触れ合うだけでじわりとした快感を呼ぶ。

    「澤村……」

     ぼうっと目を潤ませる水嶋のそこに触れると、他愛ないキスだけで痛々しいぐらいに張りつめていた。

     感じやすい男のことだ。ここで笑えば傷つくだろうから、彼の髪に顔を埋めて笑うくちびるを隠してしまうのがいい。

    「どうする、このまましようか」

    「でも、ここに着いたばかりで……まだ陽も高いだろ。風呂にも、入ってないんだし……」

    「そんなこと言って、あんた我慢できんの? いまここでやらなかったら後悔すると思うけど」

    「なに言ってるんだ、そんなこと」

     あるわけないだろうと言いたげなくちびるを指でふさぎ、そのままつうっと胸元へ下ろしていくと、翳った顔がぱっと赤らむ。

    「べつに俺はいいけどね、やらなくても。でも、あんたがのんびりしているあいだだってこんなふうにいたずらするよ?」

    「ん、――ん……っ……」

     視線を合わせたまま、シャツの上から胸の尖りをゆっくり擦ると、水嶋は悔しげに顔をそむける。素直にしてほしいと言わないから、よけいに煽られるのだと彼はわかっているのだろうか。

     しだいに、ちいさな乳首は指でつまみやすいように硬くしこり、きゅっとひねっただけでどうしようもなく甘い吐息が漏れた。それと一緒に、水嶋が弱々しく頭を振る。

    「……やめろ、って、……そこばっかり、触るなよ……」

    「あのさぁ、いい加減認めなよ。あんた、いつもここを触られるのが好きじゃん。俺がこうしてるだけでめちゃくちゃ感じるんだろ」

     高いプライドを感じさせる整った顔に「いやだ、やめろ」と言われると、自分でも驚くほど獰猛な征服欲がこみ上げてきてしまう。

     つき合い始めた頃、まだ彼というものがよくわかっていなかった頃ならいざ知らず、恋人として肌に触れるのが当たり前になったいま、あまり乱暴なことはしたくないのだが、水嶋から羞恥心というものは抜けきらないらしい。

     奔放に乱れることを恥じる男を組み敷いていると、どうにも追いつめたくなるのは、もう性分としか言いようがない。シャツの布越しに乳首をこねくり回し、突起が十分に目立ったところで「ほら、自分でも見てみなよ」と囁いた。

    「いや、だ……」

    「認めろって。あんたはね、俺にここを弄られると感じてしょうがねえんだよ。もっと触ってほしいって言えよ。そうしたら泣くぐらい気持ちよくしてやるから」

    「う……」

     きつく閉じた瞼から、いまにもほろりと涙がすべり落ちそうだ。さすがに言い過ぎたかなと思いながら顔中にキスを降らせ、シャツを開こうとしたときだった。

    「失礼します、お客様」

     襖の向こうから響く低い声に、それまでぼんやりしていた水嶋がぎょっとした顔で跳ね起き、ついでに力一杯突き飛ばしてきた。

     不意打ちを食らった澤村が座卓の端にガツンと後頭部をぶつけ、「いってえ……!」と呻いたのと同時に慌てて身繕いを整えた水嶋が「どうぞ!」と声をあげ、がらりと襖が開く。まるでタイミングを計ったコントみたいだ。

    「おくつろぎ中のところ、失礼いたします。今夜の献立のことで参りました」

     部屋の入口で膝をつき、頭を深々と下げるのは、清潔な白甚平を身につけた大柄な男だ。

    「志乃やの厨房を引き受けております、鬼嶋龍司と申します」

     そう言って顔をあげた男の鋭い眼光に、水嶋も、後頭部をさすっていた澤村もちょっと目を瞠った。

     同僚の言っていたことは伊達じゃない。逞しい身体つきといい、料理人らしく短く刈り込んだ髪といい、文句のつけようがない日本男児だ。そのうしろに、篠原が控えていた。

     おっとりした雰囲気の篠原と鋭いまなざしの鬼嶋と、おもしろいぐらいに正反対の雰囲気だが、ふたりともこの古びた旅館にしっくりとけ込んでいるあたり、ひとつ屋根の下で働く者同士だけのことはある。

    「ご予約時にも確認させていただきましたが、お口に合わないものはないか、再度お訊ねに参りました。なにかアレルギーはございませんか」

    「いえ、俺はとくに……澤村もないよな……。はい、ふたりともありません。大丈夫です」

     とんでもない場面に踏み込まれそうになったことで動転しているのかなんだか知らないが、水嶋はいつになく早口で、こっちの確認を取る余裕もないらしい。勝手に決め込んで、笑顔を取りつくろっている。

    「それでは、今夜の献立を先にお伝えしておきます。もし、苦手なものがありましたら遠慮なくおっしゃってください。今日はいいハモが手に入りましたので、そちらをメインにした料理をお出ししたいと思っております。ハモの刺身と天ぷら、それからアワビも上質のものが入りましたので、ごま豆腐と甘鯛と一緒に蒸したものを。山菜は……」

     いかつい顔の鬼嶋が並べ立てる料理の数々は、海と山とに囲まれた金沢の魅力を生かし切ったものだ。新鮮な山菜や魚介類を、手の込んだ懐石で楽しませてくれるらしい。

     ずらずらと並ぶ旨そうな献立を聞いているうちに、思わずぐうっと腹が鳴ってしまった。

    「あ」

     これには、さしもの澤村も耳が熱くなった。

     そうだった、そういえば東京を発つ前に空港で軽く食べただけで、腹が減っていたのだ。

     遠慮ない腹の音に隣に座る水嶋は耳まで赤くし、献立の口上を中断された鬼嶋はわずかに眉をひそめ、背後の篠原は笑いを堪えて口元を押さえている。

     三者三様、てんでばらばらの反応を見せるなか、「すみません」と澤村が苦笑いすると篠原が吹き出し、「お食事の時間、早めましょうか」と言う。

    「本来なら六時頃にお出しするんですが、なんでしたらもう少し早めましょうか」

    「いや、大丈夫です。せっかくの夕食ですから、目一杯腹を空かせておきます」

     そう言うと、ずっと難しい顔をしていた鬼嶋の口元が軽くほころんだ。

    「楽しみになさっていてください。精一杯、腕をふるいます」

     もう一度頭を下げた鬼嶋たちが部屋を出ていったあと、水嶋と顔を見合わせ、今度こそ大声で笑った。

     まったく、あともうちょっとでいいところだったのにと思うが、すんでのところで邪魔が入ったのがなんだかやけに可笑しかった。

    「やっぱりあれかな、神さまが見張ってるってやつかな」

    「そうかもな。……ああいうことは夜にするのが正しいんだよ」

     身体を寄せて耳朶を噛むようにして囁く男には、ほんとうに叶わない。

     あんたに色気がありすぎるからだめなんだろうが、と言ってやりたいが、それでまたつまらない喧嘩を引き起こしても大人げない。

     このまま部屋にいるとまたもおかしな雰囲気になりそうだから、食事の時間まで散歩でもしたほうがよさそうだ。

     

     

     

     鬼嶋の言葉に嘘はなく、その晩ふるわれた山海の珍味を水嶋も澤村も無言で食べまくった。東京でも金を出せば旨いものが食えるが、やはりその土地で取れた新鮮な食材には負ける。

     素材を吟味し、選び抜かれた漆器に盛りつけられた料理は「旨い」のひと言に尽きる。華やかな蒔絵が描かれた器は紅が見事な色合いだ。季節の食材の色味を美しく、旨そうに並べるのにも才能というものがあるのだろう。

     若旦那の篠原がじきじきに世話してくれる夕餉で、澤村は茶碗二杯半、水嶋は二杯を平らげ、しまいには胃がせり上がるほどの苦しさに見舞われた。

     熱燗を差しつ差されつ、卓に何本ものとっくりを並べてほどよく酔いも回り、しばらく休憩したら、いよいよ次はお待ちかねの風呂だ。

    「今夜は露天にしとく?」

    「そうだな。明日は夕方から曇るって言ってたから、星空を見ながら風呂を楽しむなら今夜のほうがいいかもしれない」

     食事中に相談し合い、一日目の今日は岩風呂に入ることになった。

    「東京にいるときもあんたとはしょっちゅう風呂に入るけど、こういうのは初めてだよな……って、ねえ、ひとの話聞いてる?」

     ふたりきりの脱衣所で、慎みの欠片もなく浴衣を脱ぐ澤村は、すぐそばで背中を向けてもぞもぞと帯を解く水嶋に抱きついた。とたんに、「な、なんだ」と声が跳ね上がり、ひとしきり笑えた。

    「なんでそんなに驚くんだよ」

    「誰か入ってきたらどうするんだよ!」

     うなだれる水嶋のうなじがすうっと赤く染まっていく。

     もう何度も肌を重ねているのに、水嶋の羞恥心というのは、いったいいつになったら崩せるのか。

     ――どんなに時間が経っても、恥ずかしいものは恥ずかしいんだろう。そういう男だから、俺も目が離せないんだろうけど。

     それでも、東京にいるときよりは多少固さが取れているみたいだ。「俺にやらせてよ」と背後から身体を押しつけて帯を解くあいだ、頬に含羞の色を浮かべながらもじっとして澤村に任せているのが妙にいじらしい。

     なにがしたいか、どうしたいか、自分ではっきり口にしない男だが、抵抗したいのを必死に抑えて身体を預けてくれているのだろうと思うと、可愛がりたいのか泣かせたいのか、自分でもわからなくなってくる。

    「身体、洗ってやるよ。髪も。そのあとは朝まで寝かせない。いいよな?」

    「……うん……」

     こくりと頷く男に、思わず笑いがこぼれてしまう。視線を合わせていなければ素直な反応を見せてくれるのが、水嶋らしいところだ。

     風呂場の脇にある洗い場で互いに背中を流し合ったあと、水嶋を抱きかかえて入った岩造りの湯船からは、満天の星空が楽しめた。

     真っ暗な夜空にぎっしりと星が敷き詰められ、こうして見ているあいだにもこぼれ落ちてきそうだ。

    「綺麗だなぁ……。こんなにたくさんの星を見たのって、奄美大島以来だよな」

    「ああ、あそこはよかったよな。また今度時間つくって行こう」

    「そうだな。今度は一週間か二週間滞在して、島の隅々まで回りたい」

     水嶋がこつんと頭をもたせかけてきて、夜空を見上げる。夏でも涼しい風が吹く晩だ。剥き出しの肩が冷えないように湯をかけてやりながら、「あ、流れ星」と呟くと、「願いごとが間に合わない」と返ってきて、思わず笑ってしまった。

    「なにをお願いしたいんだよ」

    「言わない」

    「言えよ」

     顎を掴んで振り向かせると、髪を濡らした水嶋は楽しげに微笑んでいる。裏のない笑顔にどきりとした瞬間、そっとくちびるが重なった。

    「言ったら叶わなくなる、……なんてな。澤村とこの先も一緒にいられるようにってことは、星に願うんじゃなくて、おまえ自身に言うのが正しいよな」

    「あのねえ……、あんたねー……」

     どうにもこうにもため息しか出てこなくて、頭をかきむしりたくなってしまう。

     さっき、部屋では突き飛ばしてきたくせに。こんなときにかぎって甘いキスと胸にじわりと滲みる言葉をもたらしてくれる男は経験足らずだけれども、確かに年上だけのことはある。

     最近、ここぞというときに振り回されているような気がするのは、ひとでなしたる自分の力が弱まったせいか、それとも水嶋のほうが経験を積んで逞しくなったのか、いったいどっちなのだろう。

     目の前の綺麗な笑顔に理性が壊れてしまいそうだ。腹立ちまぎれに反応しかけた下半身をぐっと押しつけると、水嶋がびくりとのけぞった。

    「だめだって、ばか、おまえ」

    「あんたが火を点けたんだろうが。責任取れよ」

    「責任って……」

     ぐっと息を呑む水嶋のそこに触れようとしたが、それよりも早く手を振りほどかれ、ばしゃばしゃと派手に湯を跳ねとばして風呂から出ていかれてしまった。

     だからといって怯んでいられるか。澤村もあとを追って脱衣所に駆け込んだ。昼間からの快感が身体にしつこくはびこり、夜も更けてきたいまとなっては耐えられないほどに熱く渦巻いているのだ。

    「逃げるなよ」

     まだ濡れている身体に急いで浴衣を羽織ろうとしていた男の手を強く掴むと、ちょっとばかり怯えた顔が振り向いた。

    「……ここじゃ、いやだ」

    「わかってる」

     人目を気にする水嶋を徹底的に泣かせるつもりはない。だけど、せめてキスだけはしたい。「俺に浴衣を着せてよ」と頼むと、とっくに着替え終わっていた水嶋が息を切らしながら、「どうして」と不審そうな顔を向けてきた。

    「そのあいだ、俺はあんたにキスするんだから。いいだろ」

    「おまえな……」

     ばか野郎と呟いた水嶋を引き寄せ、笑いながら「ほら、早く」とうながした。

    「早く着せないと、ここで襲うぞ」

     渋々頷く水嶋がタオルで身体を拭ってくれたあと、浴衣を広げ、ふわりと肩に羽織らせてくれるその隙を狙って、くちびるをふさいだ。

    「……ん……ぅっ」

     遠慮なしに舌先でくちびるを舐め回し、薄目を開けて「手が止まってる」と呟くと、ぎくしゃくとした感じで浴衣の前が合わさった。

    「澤村、熱い……」

     ちいさく呟いた水嶋の額の生え際に、うっすらと汗が滲んでいる。

    「また汗かきそうだよな。ま、いいか、風呂なら何度でも入れるし。次は帯締めて」

     もたもたした仕草に焦らされ、余裕がなくなってしまう。

     ようやく帯を結び終えた男の両手首をぎっちり握り込むと、びっくりしたような顔が近づく。

    「部屋に戻るまでにぶっちぎれても許せよな」

    「な……っおまえ、なに言って……!」

     部屋と風呂が百キロも離れているわけでもあるまいし。自分でも可笑しかったが、せっかく日常を遠く離れているのだ。いつもと違う場所にいるなら、水嶋を抱く手順だって多少狂っても構わない気がする。

     丹前を羽織り、首にタオルを引っかけて浴室の扉をがらりと開けた。夜の八時を過ぎたいま、遅く着いたほかの客はちょうど食事中らしい。遠くからにぎやかな声が聞こえてくるのとは逆の客室に急ぎ足で戻る途中、手の中のしっかりした骨の感触にたまらなくなってきて、素早く肩越しに振り向いた。

    「なんだよ……」

     声をうわずらせる水嶋をそのまま問答無用で近くの部屋に押し込んだ。「布団部屋」と掠れた墨文字で書かれた札が部屋の脇の柱にかかっていたのを確かめたうえでのことだが、当然、水嶋のほうは呆然としているようだ。襖を閉じて真っ暗な部屋の中、手探りで澤村の袖を掴んでくる。

    「ちょっと待て、澤村、部屋はすぐそこ……」

    「いいから黙って。人目があるところじゃいやだって言ったのはあんたのほうだよ」

    「だからって、がっつかなくてもいいだろ……っん、……っ!」

     積み重なる布団に水嶋を立たせたまま押しつけ、浴衣の前を割って下着の上からまだ湿っているそこを握り込んだ。

    「……いやがるくせにエロいんだよな、あんたは。がちがちだ」

    「あ……」

     笑い混じりに囁くと、暗闇の中に熱っぽい吐息が響く。

     灯りのない小部屋で水嶋がどんな顔をしているかわからないが、涙を滲ませているのは間違いない。

     下着の縁に指を引っかけてぐっと押し下げると、硬く濡れた性器が跳ね出る。それを巧みに扱きあげてやると、水嶋が膝をがくがくさせながらしがみついてきた。

    「あぁっ……澤村……っやだ、いやだ……」

    「やだじゃなくて、俺のにも触って」

     肩に食い込む手を引き剥がし、自分のそこに触れさせると身体を強張らせる気配が伝わってくる。そのことに、またもやりすぎたかと遅い後悔が胸をちくりと痛めたが、そうじゃなかった。

     わずかに息を呑んだ水嶋が拳を胸にあて、「……わかったよ」と熱を孕んだ声で応え、澤村の腰にすがりつきながらするするとひざまずく。

    「せっかく、東京を離れてるんだからな。……してやる」

    「え? ……え? 水嶋さん、ちょっとあんた、なにもそこまで……っ」

     最後まで言い終えないうちに浴衣を割られ、下着から取り出されたそこが熱い口の中に飲み込まれた。

    「……ッ」

     くちゅりと跳ねる舌が、太竿の筋を浮き立たせるように伝っていく。

     驚くなんてもんじゃない。真っ暗闇で目を剥く澤村は、荒い息を殺すために口元を手のひらで覆った。

     どんな場所でもあれだけ不埒な行為を拒む水嶋が、まさか老舗旅館の布団部屋でフェラチオしてくれるとは思わなかった。夕食の酒がいま頃回ったか。ひょっとしたら彼も、日常とは遠くかけ離れた状況にのぼせているのかもしれない。

     浴衣の裾を割り、両脚のあいだに顔を埋めてくる男が懸命に舌で奉仕してくれることに、油断すると乱暴に腰を突き動かしてしまいそうだ。

    「……いい、気持ちいいよ……」

    「んっ……」

     両手を添えた肉棒をしゃぶる生々しい音だけが、やけにはっきりと聞こえた。たまにいたずらっぽくくびれを噛まれ、先端から滲み出す先走りを舐め取るように吸われるとひどく感じてしまう。

     無意識に水嶋のうなじを強く掴んでゆるく腰を揺らし、温かい唾液がたっぷりと絡まる口腔を犯す快感に浸った。水嶋の鼻先が硬い茂みにあたるのにも感じる。

     日頃、多くのスタッフを従えて冷静な指揮を執る男が、こんなときだけは自分の言いなりだ。硬く勃起したそこをはしたなく咥えてくれることに、背筋がぞくぞくするほどの快感がこみ上げてくる。

    「そう、くびれのところを丁寧に舐めてみて……そうだよ、うまくなったよな」

    「んっ、――ん、ふ、……っ」

     なんとか暗闇に慣れてきた目に、扇情的な光景が映る。互いに浴衣の帯がゆるみ、水嶋の胸が汗で光っているのが見える。熱を忍ばせた舌が淫らにくねり、自分のすることを深く恥じているような顔で舐め回してくれるのもたまらなくいい。

     水嶋さん、と囁こうとしたところへ、ふいにべつの声が離れたところから聞こえてきた。

    「……今夜は忙しいですよね。龍司さん、無理しないで早めに寝たらどうですか」

     突然聞こえてきた声にぎくりとして、布団の山に寄りかかっていた身体を起こしたが、水嶋は聞いているのかいないのか、ぴちゃぴちゃと音をたてて夢中でしゃぶり回してくるものだからどうしようもない。

    「……ちょっと、水嶋さん……」

     ヤバイって、と言おうとしたとたん、かたんと襖が鳴る。気配から察するに、ふたりは襖の向こう側で身体を寄せ合っているらしい。

     すわ喧嘩かと快感にとろける意識を立て直そうとしたが、どうも違うようだ。楽しそうな笑い声のあとに、ゆったりした低い声がくぐもって聞こえた。

    「俺が眠いと言えば、おとなしくひとりで寝るんですか。せっかくの土曜なのに」

    「そうですけど、疲れてるかなと思ったから……」

     恥ずかしそうな声が聞こえてきて、胸が高鳴る。

     間違いなくあの声は若旦那の篠原のものだ。そして、相手は強面の板前だ。

     ――そういうふたりが、どうしてあんなに親しげに囁き合ってるんだ。

     たぶん廊下で話し合っているのだと思うが、いつ踏み込まれるかと思うと、わずかな吐息を漏らすこともできない。指一本動かせない。

    「俺が部屋に行かなかったら、遼路さんは眠れないんでしょう?」

    「……子どもじゃありません」

    「そうですよね。確かに子どもじゃない。俺が近づくだけで――こんなにしてるんだし」

    「ッ龍司、さん……ちょっと……ぁ、ん……ッ」

    「俺はね、この一週間、おとなしく待っていたんですよ。それだけを楽しみに真面目に働いてきた男をがっかりさせるのが趣味なんですか、あなたってひとは」

    「あ、あ、もう、……さわらない、で、ください……」

     含み笑いに続いて聞こえた甘くとけていく声に、心臓が口から飛び出しそうだ。

     端正な顔に眼鏡が似合う若旦那と、恐ろしく男前の料理人はそういう仲だったのか。

     こんなにしてるんだし、という声がなにを指しているんだか、わかりすぎて怖い。だが、幸いにも彼らにはまだ仕事が残っているらしい。「もう、仕事中はやめてくださいって」という小声とともに立ち去っていく気配にほっとため息をついたとたん、細く尖らせた舌先がくにゅりと割れ目をいやらしく押し開いてきて、亀頭を強く吸われ、思わぬ快感に腰がとろけそうだ。

     辛抱強く奉仕を続けてくれていた男の髪を鷲掴みにし、身体を前のめりにさせた。

    「……ね、口の中に出していい? このままいっていい? 俺、もう我慢できねえよ」

    「ん……」

     ぐちゅぐちゅと粘る音に理性が吹き飛びそうだ。水嶋がわずかに頷いたのと同時に、彼の頭をぐっと引き寄せて思いきり口の中に放った。

    「……ッんん……」

    「っく……」

     激しく脈打つ身体をぐっと丸め、水嶋の髪を掴んで引きつけるあいだにも、気の遠くなりそうな勢いのある射精が続く。

     水嶋がちいさく咳き込む。ためらいながらも、こくんと喉を鳴らす音が何度か聞こえた。

     それでも掴んだ頭を離さずに、まだ硬度を保ったままのペニスで口の中を軽く突き、無言のうちに残滓までも綺麗に舐め取ることを求めた。

    「あー……もう、気持ちよすぎ……」

     先端のくぼみにくちづけてくれた水嶋が熱っぽい吐息を漏らし、よろけながら立ち上がる。

     それを脇から支え、「大丈夫? 歩ける?」と囁くと、声にならない声が返ってきた。

    「……無茶、させるなよ……」

    「ごめんごめん、我慢しようと思ったけど止まらなかった」

     途中で篠原たちが通りかかったことには気付いていないらしい。もし気付かれていたら、驚きのあまり噛みつかれていたかもしれないから、不幸中の幸いだ。

     用心しいしい廊下をのぞくと、もう誰もいない。浴衣の襟元を直そうと苦心惨憺している水嶋の腕を引っ張り、足早に部屋に戻ることにした。

     

     

     

     二組の布団が敷かれた部屋に駆け戻り、先に息が切れた水嶋が着崩れた浴衣の裾につまずいて掛け布団の上に倒れ込んだ。

     枕元の薄明かりを点けずとも、白い月の光で室内はぼんやりと明るい。

    「うわ、なんかその格好って時代劇みたいだよな。スゲー燃える」

    「なに言ってんだよ……」

     笑いながら襖を閉め、外から入ってくる灯りだけを頼りに水嶋に近づいた。

     逃げそうになる剥き出しの足首を掴むと、びくりと反応が返ってくるのがおもしろい。こっちは一度いかされているから、余裕がある。

     硬いくるぶしを撫でさすり、浴衣をまくり上げて太腿に向かってゆっくりと手のひらを這わせていくと、「あ……」と掠れた声とともに水嶋が腰をひねってしまう。感じている顔を見せたくないらしい。それならそれで構わない。身体にだって感情は出るのだから、悶える様をすべて見てやる。

    「ぅ……――ん……、ぁ……っ」

     欲情でしっとり湿る肌の質感を楽しみながら内腿をさする澤村はあぐらをかき、ぐったりと打ち伏せる水嶋の身体を横抱きにして、頭を膝に載せてやった。

    「足、開いて」

    「……ッぅ……」

     ふたりしかいない部屋での言い付けに、両膝を立てた水嶋がきつく瞼を閉じながらぶるぶると震える腿を開いていく。だけど、少し開いたかと思ったらそこで止まってしまうことに焦れて、力任せに両手で大きく割ってやった。

    「澤村……」

    「こうしないと触れないだろ」

    「だからって、こんなの……っ」

    「恥ずかしいなら目を閉じてなよ。さっきあんなに気持ちよくしてくれた礼に、めちゃくちゃよがらせてやるからさ」

     囁き声に水嶋がくちびるを噛み、顔をそむける。それをいいことに、乱した浴衣の裾をまくり、さっき中途半端に触れたそこをそっと撫でた。

    「っん……」

    「気持ちいい? 顔を見せたくないなら、せめて声を聞かせて」

     硬くなるそこを手のひらで覆い、陰嚢ごとやわやわと揉み込む。そのたびに水嶋の腰がよじれて、引き締まった肢体を覆う浴衣も乱れていく。

     暑いのか、それとももっと強い愛撫を欲しがっているのか、浴衣の襟元を無意識に開く水嶋に低く笑い、昂ぶる下肢を嬲るのとはべつの手で胸に触れると、深く息を吸い込む気配が伝わってきた。

    「……澤村……それ、……――気持ち、いい……」

     声を震わせてせがむ男に覆い被さり、「やっと可愛くなった」と笑いかけ、ますますきつく乳首を揉んだ。指のあいだで擦ると、ちいさな先端はふっくらと腫れて淫らな感触に変わっていく。

    「んんっ……」

     感じているのに腰をよじらせて逃げようとする男を組み敷き、そのままねろりと乳首に舌を這わせた。

    「あ……――ッん……」

     洗い立ての敷布をきつく掴む水嶋の掠れた声がいい。窓を細く開いた室内には爽やかな夜風が入り込んでくるが、火照った肌を冷やすほどではない。

    「なんかさ、東京であんたを抱いているときとはちょっと違うよ」

    「……どんなふうに……」

     硬く勃った乳首をきゅうっと指でつまんで引っ張ると、水嶋がしかめ面をする。赤くふくれた先端を噛んで舐めしゃぶり、浴衣をさらにはだけさせた。それだけで翳った顔が上気していくのも、見ていて楽しい。

     東京で仕事をしているときは愛想の欠片もない男だが、時間をかけて身体を開かせていくうちにどんどん崩れていく。その著しいギャップが、澤村を長らく虜にしているのだ。

    「水嶋さんって浴衣が似合うよな。襲いたくなるぐらいエロくていい。アオカンすりゃよかったよ」

    「そんなの……許すわけ、な……っ」

     浴衣に隠れた尻の狭間に唾液で濡らした指をするりともぐり込ませると、言葉の終わりが甘くとけていく。狭く締まるそこを馴らしてやるうちに肉襞が熱く湿り、指にいやらしく絡み付いてくる。

     そのことを耳打ちすると水嶋は夜目にもはっきりと顔を赤らめ、ひくんと喉をのけぞらせた。窓から射し込む月明かりで、喉が白く艶やかに光るのが悩ましい。

     敷布を蹴って悶える男の汗ばんだ額にくちづけ、くちゅくちゅと音をたててゆるめてやった。

    「だめだ、澤村……もう、……もう、欲しい……」

    「ん」

     ふたりきりで忙しい東京を離れ、知るひとのいない場所で抱き合うことに、水嶋もいつになくのめり込んでいるらしい。

     はっきりした言葉でせがまれて抑制が効かなくなりそうだが、ローションで濡らすわけではないから、いきなり挿れたらつらいだろう。

     そう思って、あたりを見回し、あ、と気がついてそばに置いてあった革のバッグを引き寄せた。確か、アフターシェイブ用のクリームを持ってきていたはずだ。

    「ローションとはちょっと違う感触だろうけど、使わないよりはいいし」

    「うん……」

     とろんとした目つきで抱きついてくる水嶋の髪に鼻を埋めていると、こんなときに不謹慎だが、なんだか笑いたくなってしまう。

     下着を履き替えるのと同じ感覚で女を抱いていたときでさえ、こんなふうに相手の身体を気遣うことはほとんどなかった。

     ――寝る相手にも遊ぶ相手にも困らなかった。だけど、手を焼かされる楽しさっていうものを俺は知らなかったんだ。

     たとえば水嶋が、どんなことでも言いなりになるような気弱な性格だったら、もっと事情は違っていたと思う。自分のつくるものに対しては驚くほど貪欲で、真摯な対応を見せる男は、だけど恋愛のことになるととたんに及び腰になる。

     ゲーム業界でも屈指のトップクリエイターと噂される男に触れるたび、艶やかに色づかせるのは自分だけだ。その楽しさは、明日になれば忘れてしまうようなイージーな恋愛とは比べものにならない。

    「……そろそろいいか」

     ぬるりとしたクリームを丁寧に塗り込んだあと、両脚を高く持ち上げてひくつく場所に猛ったものをあてがうと、水嶋の呼吸が浅くなる。

    「――澤村……ッ」

     ぐっと腰を突き挿れ、中程まで一気にねじ込むまで力をゆるめなかった。いつも、このへんがたまらなくきつい。窮屈に締め付けられて眩暈しそうだが、水嶋の身体にも相当の負担があるのだろう。掠れた喘ぎをこぼしながら涙を滲ませる男の髪をやさしく撫で、あやすように揺すりながらさらに奥へと貫く。

     はち切れそうな水嶋のそこは先端が濡れて糸を引き、見ているだけでぞくぞくする。

    「熱い。あんたの中……ひくひくしてるの、自分でわかる?」

    「あぁっ、だめ、動くな、……だめだって……」

    「動くなって、んな無茶なこと言うなよ」

     投げ出した水嶋の手を掴んで熱のこもる奥をじっくりと突き、ぎりぎりまで引き抜いてはまた強く押し込んだ。

     乱れた敷布に横たわる彼の身体は汗で艶めかしく光り、精緻な模様が美しい藍染めの浴衣がしどけなく張り付いている。いまじゃもう、どうにか腰ひもが巻き付いているぐらいにはだけてしまっているが、中途半端に脱がせたことで妙に卑猥だ。

    「澤村……」

     欲情に濡れた視線に誘われているような気になり、澤村は「ああもう」と呟いて水嶋の身体から浴衣を剥ぎ取ったついでに、自分も袖を脱ぎ落とし、深々とはめ直して真っ向から睨み据えた。

    「めちゃくちゃに犯してやる。何度でもいけよ」

    「ん、ん――ッ」

     獰猛な快感におののく水嶋がくちびるをわなかかせるが、誰がここで手をゆるめるものか。激しく突きあげて、奥まったところへ亀頭を擦りつけ、濃い熱を孕ませることに夢中になった。

     ひと突きごとに水嶋が悲鳴のような喘ぎをあげ、腰を絞り込んでくる。背中にきつく爪を立てられても容赦せず、重たい陰嚢をぶつけるようにして深い挿入を繰り返す。

     頭の中は真っ白だ。どうすれば水嶋が感じるか考えている余裕はない。

     微弱に震える粘膜は耐えきれないほどに熱くうごめき、澤村を食い締める。

    「――ア、ッ……ぅ…いく、ッもう……いかせて…」

     血管が太く浮き出す逞しい男根をみっちりと奥まで咥え込む水嶋の喉に噛みつき、猛々しく腰を遣った。指の先にまで火が点くような快感に、意識の端々まで支配されていく。

     ひときわか細い声とともに、互いの腹のあいだで擦れていた水嶋のそこから白いしずくが飛び散った。

     射精する瞬間、そこを覆って隠そうとするのを察して素早く両手を押さえ込んだ。

     男なら、セックスで達したときに射精するのはしごく当たり前のことだ。だが、水嶋みたいに、普段あれだけ見事な采配を振るう男が快感を制御できず、澤村を受け入れるそこをひくつかせ、あまつさえたっぷりとしたしずくをしたたらせる光景にはどうしたって目を奪われる。

    「見せろよ。あんたのいく顔、やらしくて好きなんだ。たくさん出して」

    「あ、あ……」

     涙混じりの目を瞠って驚愕する水嶋はなにか言いたげだが、快感にふけるあまり、言葉にならないようだ。びくんと跳ねるペニスが吐精する様を一部始終眺め、「まだまだ」と澤村は笑った。

    「俺の形を覚えさせてやる。ただし、今度はそう簡単にいかせないからな」

    「ッ澤村、あっ、あぁッ」

     息を呑む水嶋を四つん這いにさせて、淫猥な丸みを持つ尻の狭間から敏感な陰嚢にかけて剛直した肉棒を何度も擦り付けた。中に挿れたまま、うしろから手を回して乳首をつねると、汗ばむ身体が弓なりに反り返る。

    「も、う……ゆるして……」

     後背位でつながると、最奥まで届いて少し苦しいらしい。敷布に頬を擦り付けて懇願する水嶋の背骨に沿ってキスを落としていくと内側がきゅうっといやらしく窄まり、思わず引きずられて達してしまいそうな締まり具合だ。

     荒い息をつき、力任せに強く、短い間隔で抜き挿しした。水嶋の中で充血した自分のそこが限界まで張りつめ、鋭く息を吸い込むのと同時に生暖かいしぶきがどっとあふれる。

    「こぼさないで」

    「……そんな――っ…あぁ…」

     ぶるっと震える男の尻を痛いぐらいに掴んでおのれのそこを締め付けさせると、水嶋がすすり泣きながら頭を振る。

     二度目の絶頂とは思えないほどのおびただしい精液を吐き出し、意識がとろけそうだ。

     震える水嶋の内腿に伝っていく生々しい体液にも、そそられる。男の自分が、同性を抱いていると強く実感する一瞬だ。

     残滓を絡ませて動くと、じゅぷじゅぷと淫猥な音が響く。視覚的にも凄まじく、澤村に突き動かされてむりやり拡げられた水嶋のそこは小刻みにひくついて薄赤く爛れ、本人の意思とは裏腹にもっと奥へ誘い込むようにうごめくのだ。

    「はっ、…あっ…あっ…」

     男の精液で最奥まで濡らされた水嶋の声はきわどく、官能的な深みを増していく。それだけであからさまに興奮してしまう自分がおかしいぐらいのだろうか。

     敏感に反応し、敷布に擦れるだけでも感じるらしい乳首をつまんで転がすあいだもゆっくりと硬さを取り戻していく。

    「こっち向いてみな」

     つながったままぐるっと体位を変えると、幾筋もの汗と涙で頬を濡らす水嶋が荒く息を吐き出して視線を合わせてくる。

     自分ではそうと気付いていないのだろうが、凄味さえ感じさせる色香に鋭い執心が胸を突き上げる。

     どんなに泣かせても足りない。これは自分だけのものだとわかっていても、何度でも、声が嗄れてでも「おまえだけだ」と言わせたい。

     一度いかせてからさほど時間が経っていないが、彼のそこははしたなく勃ちあがり、先端をしとどに濡らす。

     少しずり下がって浅く突き、濡れた舌がよく見えるように大きくのぞかせて乳首を舐め回した。

    「ん……」

     髪をかき回してくれる水嶋の指が熱い。ぼうっと浮かされたような目つきで澤村のすることを見守り、声を押し殺そうとして失敗する姿に煽られる。刺激を受けて、赤くふくらみきった胸の肉芽をこりこりと押し潰すと、いやらしい弾力が指に残って弄り続けたくなるのだから困る。

    「……いきたい……澤村……」

    「また? さっきいったばっかじゃん、やらしいな」

    「……ぅ……」

     笑いながら揺すり立てると、水嶋が堪えきれずに涙をこぼす。けっして本気で苛めたいわけじゃない。これはほんの余興、感じやすい男に抱く執着心の表れだから許してほしいと勝手なことを考え、深く深く埋め込んでいった。

    「あ――……」

     勃起させたままじっくりと貫き、根元を締め付けることで、いきたくてもいけないらしい。血液の流れをせき止めるように、輪っかにした指で水嶋のそこをゆるく扱き、達しそうになったところでぎゅっと締めた。

    「自分で動いてみな。ゆっくりでいいから」

    「や、だ…いや…いきた、い……」

     泣きじゃくり、水嶋が朦朧とした口調で呟く。ぬるぬるした精液を絡ませるアナルが粘っこくひくつき、澤村をゆっくりと受け入れていく。そのあいだ、澤村は何度も息を吸い込んで耐えた。水嶋がここまで淫欲に溺れるのもめったにないことだ。疼くような快感を覚えて乱暴に突き動かしたくなるのを堪えるのはつらいが、水嶋が乱れる様子をもう少し見ていたい。

    「……あぅ……ん…んっ……」

     自分からぎこちなく動くことで、開ききった尻の奥へ硬い肉棒を咥え込む水嶋のそこから、とろっとしたしずくがあふれ出し、竿を濡らしていく。

     何度も強く噛んだせいか、くちびるも濡れて肉感的に腫れ上がっている。それを甘く吸ってやると、水嶋が待ちきれない感じで求めてきた。

    「あ…あ…ッいい、すごく――……」

     硬くそそり勃つもので、とろけるような充血した肉を擦りたてる澤村の鼓膜に、せっぱ詰まった喘ぎ声が届く。

     どうしてこんなに気持ちいいんだろう。重なる肌のどこもかしこもみずみずしく、同じ男なのに気味が悪いという考えはまったく浮かばない。いっそ、このまま快感で頭がおかしくなってもいいと思うほどだ。

     すぐに水嶋も両脚を腰に絡めてきて、おずおずと動きを合わせる。

    「――あつい、澤村……澤村……」

    「いきなよ。ちゃんと俺に掴まって。離さないで」

     我慢に我慢をさせて充血したペニスを扱いてやると、痙攣を起こしたように身体を激しく震わせた水嶋がとぎれとぎれにしゃくりあげる。

    「あぁ……」

     欲望に溺れて涙しながら達する姿は、何度見ても独占欲をそそる。

     こんな乱れ方をする男は頑丈な檻に閉じ込め、自分以外にはずすことのできない鍵をかけてひそかに愛でるのが正しいんじゃないだろうか。

     彼の過去の恋人は烏堂しか知らないけれど、それだけでも十分だ。

     ――もし、ほかにもこのひとを抱いたことがある男が出てきたら、俺は嫉妬で怒り狂うかもしれない。

     これまで、胸を妬く感情とはまるっきり無縁の人生を送ってきただけに、突如胸に湧いた強い征服欲は自分でも持て余しそうだ。

     この気持ちを言葉にしたら、たぶん大人げないことになる。だったら、身体にわからせたほうがいい。

    「あんたにはほんとうに……いつか俺はだめになりそうだよ」

    「……澤村、どうした……?」

     自嘲気味な響きを聞き取ったのか、水嶋はしばしのあいだぼんやりした顔をしていたが、ふいにやわらかに微笑んで両腕を首に巻き付けてきた。

    「好きだよ。俺には、おまえだけなんだ……」

     他愛ない仕草、言葉が胸を揺らす。

     力に訴えれば難なく彼を閉じ込められるだろうが、無茶をしなくてもこんなふうに微笑んでくれるなら、欲張らなくてもいいんじゃないだろうか。

     熱い身体を抱き締めて、「俺も」と澤村は笑い返した。

     

     

     

     

     

    「あー、腹減った腹減った」

     翌朝、「志乃や」の若旦那である篠原がわざわざ部屋に来て朝食の準備を整えてくれるあいだ、澤村はぐーっと鳴り出す腹を押さえていた。腹が減るのは健康な証拠だから、恥じることはないのだ。

    「朝から元気ですね。ごはん、多めに盛りますね」

     可笑しそうに言う篠原に「すみません」と笑い、ちらりと正面を見ると、こころなしか水嶋は疲れた顔だ。それもそうだろう。昨晩は理性のたががはずれてしまったみたいに彼を組み敷いてしまい、はっと気がついたら夜明けも間近だったのだ。

     確かに、朝まで寝かせないと豪語したけれど、自分でも半分冗談のつもりだったのに。

     好きな男に浴衣を着せて乱れさせると、ああまで情欲をかき立てられるものかと思うと可笑しくて可笑しくて、油断すると声をあげて笑い出してしまいそうだ。

    「あまり眠れませんでしたか。もしかして、枕が合いませんでしたか?」

     仏頂面を一目見て心配する篠原に、びっくりした水嶋が「ああ、いえ」と顔の前でわたわたと手を振る。

    「とても寝やすい枕、でした……」

     ぼそぼそと言い終える男が胸の裡で、「たぶん」と付け加えているのかと思うと、吹き出しそうだ。

     ――最後は俺の腕枕で寝かせてやったんだから、枕の感触なんてわからねえだろうが。

     目くばせしながら口をぱくぱくしてそう言うと、水嶋はまなじりをつり上げ、素早く正座をほどいて座卓の下から膝を蹴り飛ばしてきた。

    「うわっ!」

     不意を突かれてぐらぐらと身体を揺らす澤村に、ちょうどうしろを向いていた篠原が「大丈夫ですか」とさっと支えてくる。

    「す、すみません」

    「いえいえ。お腹が空きすぎましたか。もうすぐ支度が調いますから、お待ちくださいね」

     慌てる澤村と、してやったりというように軽く笑う水嶋が取り交わす意味深な視線には気付かず、くすりと笑う若旦那はてきぱきと準備を終え、「それでは、どうぞお召し上がりください」と丁寧に畳に手をついて、頭を下げる。

     朝からきっちりした和服に身を包んだ男は清楚な色気を漂わせ、思わずうなじに目が吸い寄せられる。だが、すぐに澤村は「あれ?」と首を傾げた。

    「どうしたんですか。若旦那さん、そこ、歯形みたいなのが……」

    「えっ」

     澤村の指摘に、それまでおっとりとした笑顔を見せていた篠原がかっと両目を見開き、ばたんと身体を跳ね起こす。その勢いたるや、身体のどこかに強力なバネが仕掛けられているんじゃないかと思うほどだ。

    「あの……」

     白い湯気をたてた茶碗の魅力もなんのその、若旦那の突然の豹変に水嶋も困惑した顔だ。その様子からして、どうやら篠原の襟足に残る艶めかしい痕には気付かなかったようだ。

     澤村ひとり、どうにもこうにも笑えてしょうがなかった。

     なんでそんなところに噛み痕が、なんて無粋なことを聞くまでもない。

     ――そうか。きっと、あの強面の板前にやられたんだろうな。

     どこかしら水嶋と似たような雰囲気を持つ男に、縦のものを横にもしないような生真面目な板前は心底惚れ抜いているのだろう。そうじゃなかったら、篠原自身が気付かず、かといって人目につく場所にはっきりとした痕を残すことはしない。

     含み笑いをしていると、水嶋が胡乱そうな目を向けてくる。

     澤村が笑っている理由をわかっているようなわかっていないような顔に、――このひとのうなじにも痕をつけてやりゃよかったなと考え、再び吹き出しそうだ。

     焦ることはない、まだまだ時間はある。ゆったりとした時間が流れる古都で今日、明日と過ごすなか、水嶋自身が気付かない場所に所有の証をつけてやる機会はたくさんあるはずだ。

     にんまりと笑う澤村が、「いただきます」と声を張り上げて茶碗を手にしたことで空気が切り替わり、篠原もどことなくほっとした顔で、「どうぞ、……たくさん召し上がってくださいね」と微笑み、そそくさと部屋を出ていった。

    「なんだよ、なにを笑ってるんだ」

     黄金色に焼けたおいしそうな卵焼きをぱくつく水嶋に「うん」と曖昧に頷き、茶碗いっぱいのごはんをかき込んだ。

     情熱的な愛し方をする男がつくる料理はひと味違うとかなんとかばかげたことを頭の隅で考えながら、「今日はどこを回ろうか」と言うと、水嶋も気を取り直した様子で、「そうだな」と漬け物をぱりぱりと噛み砕く。

    「やっぱり兼六園を見ないことには金沢に来た意味がないよな。金沢城と長町武家屋敷跡と、あとえーと」

    「ちょっと足を伸ばして能登にも行きたい。輪島塗の器が欲しいんだ。それと市場も見たいし……気多大社っていう古い宮があるんだ。そこも見たい。日本海の守り神として古くから有名らしいんだよ」

    「へえ、いいね。あとでガイドブックを見てみよう」

     開け放した窓の外は、まぶしい陽射しですべてのものがくっきりと力強く浮かび上がっている。

     光り輝く緑濃い庭を眺めたあと、互いになんとはなしに視線を絡め、笑い合った。

    「澤村、おかわり」

    「はいはい」

     恐ろしいスピードで空になった茶碗を受け取り、そばに置かれたおひつを開けると、炊きたてのごはんと清々しい木の香りが混ざったいい香りがふわんと立ち上る。

     天気がよければ、憂いなし。

     旨い朝食で始まる一日は、なんと幸福なことか。

     おめでたい思考に微笑む澤村と、旺盛な食欲を見せる水嶋のもとにも、胸が躍るような明るい夏の陽射しが届いていた。


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