烈火の誓い(後編)

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    【烈火の誓い 前編】

     

     悶々とした熱が身体の奥にあることを忘れかけたのは、夕暮れどきだ。素晴らしい快晴で、沈んでいく太陽を邪魔する雲はひとつもなく、斎は高良と手を繋ぎ、荘厳な夕暮れをただただ見つめていた。
     人間がどんなに頑張っても、こんなにも胸に染み込む感動はつくれない。そう思うが、少なくとも、この光景の中に自分と高良がいられることは素直に嬉しかった。
     昼間の一瞬の情事が嘘のように思えるが、掴まれた手から伝わる熱が、――あれはほんとうにあったことなんだと教えてくれる。
    「夕食、どうしようか」
    「昼間、スーパーマーケットで買ってきた刺身があるだろ。あれ食おうぜ。俺が味噌汁をつくるから、斎はメシの用意をしてくれ」
    「うん、わかった」
     東京のように電気炊飯器を使うのではなく、プロパンガスしかないここでは、鍋で飯を炊く。焦げてしまわないかどうか心配だったが、運よくちゃんと炊くことができた。
     虫除けの蚊取り線香を縁側に置いて網戸を閉め、海に面した部屋で夕食を食べることにした。
    「いただきます」
    「いただきます、……うん、うまい、このメシ、よく焦がさなかったな」
    「ずっと鍋の前で見張ってた。光司がつくってくれた味噌汁も、おいしい。こっちの味噌汁って具が一杯入ってるんだよな」
    「これに慣れると、東京の味噌汁がもの足りねえんだよなあ」
    「刺身もおいしい。新鮮なのを買ってきてよかった」
     テレビがないから、ふたりだけの会話が唯一の音だ。それと、波音と静かな潮風。緊急用のラジオはあり、ちゃんと受信することを確かめたあとはスイッチを切り、自然の音に浸ることにした。
    「こういうの、いいな……。普段は必要以上にたくさんの音の中にいるんだってことが、よくわかるよ」
     夕食を食べ終え、斎はごろりと畳に寝そべる高良のそばに腰を下ろした。
     神に祝福された島に、いま、高良と自分のふたりしかいないということが不思議と怖くなかった。
    「おまえの……つがいになるって覚悟を決めたからかな。前に会社のひとたちと来たときは、自然の脅威に押されて怖い思いをすることが多かった。でも、いまは違う」
    「落ち着くか?」
    「うん。できれば、もうここに住んでしまいたいぐらい」
     そう言うと、寝返りを打ってこっちを向く高良が可笑しそうに肩を揺らす。
    「一週間もすりゃ飽き飽きして、都会に帰りたくなるぜ」
    「そうかな。俺は結構本気でここにいたいって思ってるんだけど」
    「まだ、いまは早いだろ。一日海を眺めて、拝所に水を供えて、また海を見るってえ生活は、隠居後にやれ」
    「この島出身のおまえがそんなこと言うのか?」
     くすくす笑うと、ひょいと身体を起こした高良が、「そうだ」と頷く。
    「ちっぽけな島で自然とだけ向き合って暮らしていきたいっていうのは、確かに憧れるよな。でも、台風が来たらひとたまりもねえし、助けも呼べない。まだ俺もおまえも達観できるような歳じゃないだろ。嫌になるぐらい、まだまだ大勢の人間の中で揉まれておいたほうがいいんだ」
    「俺と同じ歳なのに、光司ってたまに……」
    「なんだよ、年寄りじみてるって言いたいか?」
     近づく顔にどきりとして、「違う」と首を振った。
    「俺より、ちゃんと物事を見てるって感じがする。そういうところ、好きなんだ」
     するりとこぼれた本音に、高良はわざとらしいため息をつく。
    「……おまえ、天然だよなぁ。俺のほうが制御しなきゃいけねえのに、引きずられる」
    「光司?」
    「来い。拝所に行く」
    「え……」
     突然腕を掴まれて、とまどった。島の聖域である拝所は森の中にあり、ハブが出やすい夜になって出かける場所ではないことは高良も知っているはずだ。だが、長靴を履かされ、懐中電灯を持たされて、断れなかった。
    「こんな時間に拝所に行ってどうするんだ? ……あ、水をお供えするのか?」
     背丈ほどもある草むらをかき分けて先を歩く高良の背中に問いかけても、答えは返ってこない。
     森の中に入ると、浜辺とは違うひんやりした空気が広がっていた。夏の夜だが、ほんの少し寒さを覚えるほどだ。
     先を行く高良が手を繋いでいてくれたせいで、迷わずに拝所へとたどり着いた。
    「入れ」
     背中を押されて中に入ったとたん、足が竦む。
     室内は真っ暗だ。それよりもなによりも、初めてここで高良と契りを交わしたときの強烈な興奮がありありとよみがえってくる。
    「光司……まさか……」
    「昼間の続きだ。ただし、今度は最後までやる」
    「……最後、まで」
    「何度もおまえと交わる。朝までずっとだ」
     低い声に、ずくんと身体の奥が疼く。高良がろうそくに火を灯し、部屋の隅に置く。とろみのある小皿も布団のそばに用意され、疼きがますますひどくなっていく。
     ――あれは媚薬だ。この島だけに伝わる薬で、俺はあれを塗り込められると、たまらなく疼いて、いつまでも光司を欲しがってしまう。
     拝所の奥の部屋には、すでに一組の布団が敷かれていた。きっと、数日前にここに訪れた島の住民によって整えられたのだろう。彼らは、ここでなにが行われるのか、知っているのか。男同士で島の秘密を守るために身体を深々と繋げる行為は荒っぽさと生々しさに満ちていて、都心のホテルやマンションの一室でするようなスマートなものではない。冷房もない場所で、汗を拭うために用意されているのは水が入ったポリタンクと何枚かのタオルだけだ。
    「斎、俺の前に立て」
     真っ白な敷布でくるまれた布団の前で、斎はうろたえながらも命じられたとおり立った。同じように立った高良がシャツのボタンをはずしてきて、肌をつうっと舐めていく。
    「光司……なにして……」
    「いいから、おまえは立っていろ」
    「ん……」
     高良は丁寧な指遣いで服を脱がしていき、あらわになった斎の肌を舐め回す。
     昼間、無理やり抑え込んだ熱が一気に暴走してしまう。くすぐったい脇腹も、背中も舐められ、膝ががくがく震え出した。
    「ちゃんと立ってろ」
    「でも……!」
     つらい、と小声で頼み込むと、「俺の肩に捕まってろ」と言われたので、きつくしがみついた。高良は構わず、斎の臍を舐め、パンツと下着をゆっくりと引き下ろしていく。内腿の一番やわらかな部分を舐められ、びくんと性器が跳ね上がった。高良の舌は剥き出しになった尻の狭間にまで忍び込み、斎が啜り泣いても止めない。勃起した性器はそのままに、熱く濡れきった舌が尻から腿へ、膝へ、くるぶしへ、そして足の指にまで伝っていく。
    「あ……」
     裸にされ、高良の舌ですべてを舐め回されることに陶然となり、高良の名前を何度も呼んだ。きついほどに昂ぶる性器に触ってもらえないのが苦しい。
    「どうして、こんな、こと……」
    「俺のつがいを俺の舌で清めるのは、当たり前のことだろう?」
     全身、高良の唾液でぬめぬめと濡らされてどうしようもなく恥ずかしい。だが、高良にされるがままでいいのだろうか。前はしきたりに従って高良に抱かれる一方だったが、昼間、身体に灯された淫蕩な炎が力を増し、斎を奮い立たせる。
    「俺が……おまえのつがいで……花嫁だっていうなら、俺にも、……同じことをさせてほしい」
    「おまえにできるか? 俺を舐め回せるか?」
    「できる、――したいんだ」
     せっぱ詰まった声で頼み込むと、高良が薄く笑いながら立ち上がる。
     傲岸不遜に仁王立ちする男のどこから舐めようかと思い悩んだが、――同じようにしてみようと、シャツを脱がしたところから懸命に舌を這わせた。自分よりも逞しい身体の男を愛撫するのは、並大抵のことじゃない。強く出っ張った鎖骨の硬さを確かめるために噛み、灼けた肌、胸にもくちづけた。下着を脱がすと、ぶるっと大きく亀頭が跳ね出て思わず腰が引けそうだが、なんとか堪えてひざまずき、胸に溜まる熱い息を吐き出しながら腰骨を舐めた。尻にもつたなく舌を這わせて、地面に頭を擦りつけるような格好で足の指一本一本を丁寧にしゃぶった。
    「光司……」
    「なんだ」
     膝立ちで高良の腰にすがりつき、斎は狂おしい疼きを懸命に堪えながら言った。
    「光司のここ、……舐めても、いいか」
    「舐めたいのか? 俺はまだおまえにそこまでしてないが」
    「舐めたいんだ。なんでだか、わからない……。でも、おまえのここを見てると、頭がおかしくなりそうで……いいか? 俺から奉仕するのは掟にそむくのか?」
    「いいや」
     高良が口の端を吊り上げた。
    「それでこそ、俺のつがいだ。二度目の交わりでは、つがいから奉仕を求めるのが島の掟だ。……斎、俺を感じさせてくれ。あとで、おまえをうんと可愛がってやる」
    「ん……」
     高良を求めること以外、もう、なにも考えられなかった。男同士で交わることの異常さより、高良とまたひとつになれる嬉しさが勝ち、斎をのめり込ませた。
    「……っん……こう、じ……の、ここ、おっきくて、一度じゃ、はいらない……」
     極太の男根を両手で握り、先端からそっとくちづけて割れ目を丁寧に舐めた。熱く勃ち上がる高良のそれは筋が太く浮き立ち、濃い繁みにまでとろみが伝い落ちていく。自分のそこよりもずっと濃く生えた繁みを舌でかき回し、重たく引き締まる陰嚢にちろちろと舌を這わせていたが、しだいにその熱量をじかに確かめたくなってきて、思いきって口に頬張った。
    「ん……ぅ……」
     丸めた舌で陰嚢をくるみ込み、にちゅり、にちゅりと舐り回しながら、竿を両手で扱いた。
     こんなにも激しい口淫をしたのは、初めてだ。性欲が薄く、潔癖なほうだと斎は自認しているが、高良を相手にするとすべてが変わる。
     前にこの島に来たとき、一度だけ高良のほうから口淫を強いられたことがあったが、あのときと今夜はまったく違う。なかば無理強いをされたあのときとは違い、今夜は、自分の中の潜む淫蕩の塊を覆う硬い殻をみずからはがしていくような感覚だ。
    「光司……光司……っん……」
     呻きながら高良の肉棒を咥え込み、頭を前後に振りながら舐めしゃぶるあいだにも、ぎりぎりまで昂ぶった淫蕩が肌を突き破ってしまいそうだ。高良もそれに気づいているのだろう。
     全裸で仁王立ちしたまま斎の頭を鷲掴みにし、おのれの猛りで思う存分、口腔を犯してきた。
     ろうそくの灯りで浮かび上がる淫猥なふたりの姿はぼんやりと壁に映し出される。床に膝をついて男のものを口で愛する斎と、その様子をじっくり眺める高良の行為は、ほんとうの意味での交わりだった。戯れに他人の身体に触れて一瞬の熱に酔うのではなく、血を分け合うほどの濃さで求め合う姿はかぎりなく獣に近い。
     張り出した高良の亀頭で敏感な上顎の内側、頬の内側を擦られるたびに、性器がひくん、ひくんとしなり、濡れる感触がする。
    「ん――ん、……ぁ……っ!」
     精一杯口の奥まで含んだ瞬間、頭を掴まれて、引き離された。たったいままで、口の中一杯を大きな塊が占めていたのに。突然の空虚感に襲われてためらっていると、高良が布団に寝そべり、斎にまたがるよう命じてきた。
    「どう、すれば……」
    「そのまま、俺の顔まで近づけろ。しゃぶってやる」
    「こんな格好で……するのか?」
    「嫌か?」
     臍まで勃ち上がった性器をやんわりと掴まれてしまえば、拒めない。ああ、と熱っぽい吐息を漏らしながら、斎は恥じらいながらも高良の言うままに彼の顔の上にまたがった。
    「んっ、んっ……あぁ……っ」
     高良の愛撫は濃密で、的確に斎の感じる場所を押さえてくる。先端をねっとりと舐り、愛液を垂らし続ける先端をくりくりと擦られると、達してしまいそうだ。
     舌先と指だけで性器を際どく昂ぶらせ、斎は、我慢しろという命令も忘れて嬌声を上げていた。
    「や――……いい、あ、う、光司、……や、もぉ、いく――いきたい」
    「だめだ」
    「あ……? あ、あ、光司……!」
     どこに用意していたのか。細く白い布で性器の根元をぎっちりと縛られ、射精をせき止められてしまい、気が狂いそうだ。
    「やだ、いやだ、くるし……い……っ」
    「斎、大丈夫だ。この状態で挿れてやる。おまえは、射精しないで達することを覚えろ」
    「え……あ、あぁ……っ!」
     小皿に盛られた媚薬を指に移し取った高良が、尻の奥深くにまでもぐり込ませてきた。どんな成分なのか知らないが、限界まで高まっていた斎の身体をさらに沸騰させるような快感を生み出す媚薬を、尻の奥の柔肉に丹念に塗り込まれた。
     普通の男として生きていくなら、その場所で感じることはまずない。
     ――でも、俺は違う。高良のつがいになったから、身体の隅々まで分け合うことを許した。
    「やっぱり硬くなってるな」
    「ずっと、……してなかった、から……」
     きつい窄まりに秘薬を塗りながら抜き挿しされる指の感覚が、刻一刻とはっきりしていく。
    「自分でここに指を挿れたことはしてなかったか?」
    「しない、そんなの、してない……! もう……や、や、こうじ……ぃ……っ」
     じゅぽじゅぽと音が響くほどに指で犯され、斎はよがり狂った。まだ高良の顔の上にまたがったままだったから、根元を縛られて充血する性器も隠すことができなかった。
    「ああっ……!」
     尻の孔を指で犯されながら、性器を舐めしゃぶられ、もうどうにもならなかった。達しようにも達することができない苦しさと、いままでに味わったことのない強烈な快感が渦巻き、はっ、と大きく息を吸い込んだ瞬間、身体の奥のほうでふくれ上がっていた熱の塊がいきなり弾けた。
    「あ……あ……あ……」
     射精もしていないのに絶頂感を味わい、気が遠くなりそうだ。なのに、尻を犯す指の感触はやけにはっきりしているし、性器も硬度を保ったままだ。疼きっぱなしの胸をどうにかしてほしくて、息を荒らげながらせり出すようにすると、ぐるっと身体の位置を変えた高良が両脚を抱え上げ、膝頭を窮屈なまでに胸に押しつけてきた。
    「いい身体になったな、斎。おまえのここは、俺の指のかたちを覚えてまだひくついてる」
    「んんっ……!」
     ひくひくと開いては閉じて、高良を誘うような淫猥な孔の周りを指でそうっとやさしくなぞられ、気が変になりそうだ。さっき、あれだけの絶頂感を味わったばかりなのに、このあと高良自身を受け入れたらどうなってしまうのか。
     まだひくつきがおさまらない窄まりに、猛った屹立の先端がぴたりと押し当てられた。無意識に腰をずり上げたが、逃げることを許さない男のぬぷっと硬く熱い感触に息を飲んだ。
     高良の怒張が、恐ろしく、ゆっくりとねじり刺さって、挿ってきた。
    「あ……っ……あぁ……っ!」
     白い布で縛られたままの性器がびくんと蠢き、とろみをこぼす。底のないドライオーガズムを斎は味わっていた。高良のものは太く、長く、すべてがおさまるまでに時間がかかる。同じ人間の身体の一部とは思えないほどの熱と硬さを持ったものが脈打ちながら、自分の中へと挿ってくる一瞬一瞬が克明に記憶に刻まれる。こんな快感を一度でも味わったら最後、二度と他のものでは満足できなくなるだろう。経験が少ない斎でさえ、そうとわかった。
    「……おまえは、俺のつがいだ。永遠に繋ぎ止めてやる」
     言うなり、高良が激しく動き出した。斎の両手を掴んで押さえ込み、圧倒的な熱を誇る肉棒で乱暴に突き上げてきた。
    「あぁっ、あぁっ」
     乱暴に揺すり立てられることで、高良も懸命に我慢していたのだと斎は知った。肉と肉が蕩け合う。みっちり奥まではまった男根できつく抉られるほど、斎の粘膜はやわらかに蕩け、高良を引き留める。意識してやれることではない。ただもう、身体が高良に素直に反応しているだけだ。息するのが苦しい姿勢で高良を受け入れ、根元までぐっぷりと埋め込まれると、互いの繁みと陰嚢が軽く擦れる。
    「いい……光司……っんぁ……あぅ……っあっ……」
     無我夢中で繋がる部分を指で触れ、互いの繁みがもつれてしまうほどにかき回した。その仕返しだというのか、高良が胸に齧り付いてきて、熱を宿したままの乳首を吸う。
    「……っん、も……ぉ……だめ……こわれる……っ」
    「壊れろよ」
     獰猛な腰遣いを続ける高良がこのうえなく甘い声で囁き、性器の戒めをほどいてくれた。
    「ああ、いい、イく……っ」
     身体をしならせてどっと精液を噴きこぼす斎は、痴態を抑えられないことにしゃくり上げた。それでもまだ、高良が中にいる。斎自身も、一度味わったドライオーガズムが身体中に染み渡っていて、そう簡単には冷めることができなかった。
    「うしろを向け、斎」
    「ん――ぁ……っ」
     尻を高々と掲げる格好を強いられ、高良のものがずくんときつく背後から挿ってきた。そこでさらに媚薬が塗り込められ、熱くてたまらない。獣の交尾のように、敷布がよじれてぐしゃぐしゃになるほど突いて突いて突きまくられ、何度いったのかわからなかった。しまいには自分から尻をくねらせ、高良の感触を肉洞一杯に覚えようとしていた。
    「光司……」
     掠れた声で呼ぶと、高良に横抱きされて、微妙な角度で突き上げられた。
     正面には、最初の交わりのときにもあった、あの大きな鏡が飾られていた。あのときよりもずっと深く、ずっと奔放に乱れる今夜の自分の身体は想像以上の熱とやわらかさを持ちながらも、硬い骨で高良を支える。
     ろうそくの炎で炙られるような、強い疼きがさっきからずっと止まらない。
    「見ろよ……前よりずっといい顔だ。おまえの中が熱すぎて、俺に吸い付く」
    「ん……あぁ……」
     うながされた先の鏡に、片足を大きく広げさせられた自分が映っていた。横抱きにされ、高良のものを尻の奥までずっぷりと咥え込み、ずるぅっと抜かれそうになるたび、泣き声に近い喘ぎで引き留めてしまう。しつこく擦られまくってねっとり蕩けた粘膜が高良のものに巻き付き、もっと深いところへ、もっと奥までと誘う。
     ろうそくの灯りがふたりの身体を淫猥な赤に染め上げていた。横抱きのまま、顔を掴まれてくちづけられた。
    「ん――ふ……ぅ……っ」
     とろとろと唾液を交わし、舌を搦めてきつく吸い合う。くねる舌先を互いに見せ合いながらくちづけ、呼吸さえもひとつにしたいという高良の情欲に煽られ、斎はたまらずに口走った。
    「お願いだから――光司、俺の中で、……いって……俺の中に、出してほしい……」
    「斎……」
    「おまえのもので濡らしてほしい。……光司は、俺にしか欲情しないんだろう……?」
    「ああ、そうだ」
     息を吐き出した高良が再び正面から貫いてくる。ずぶずぶと根元まで埋め込み、おのれの猛々しさを斎に知らしめるような、容赦ない動きだ。
    「……だったら、……お願いだから、俺の中で……」
     自分のものとは思えない淫らすぎる言葉に、頬が熱くなった。
    「孕みたいか?」
    「……ん……」
     涙が滲む目元を、高良がくちづけてくれた。
     高良の尽きない愛情を、魂を、この身体の中に孕ませたい。「伝い手」にもしものことがあったら、なにもかも受け継ぐのが、「つがい」の役割だ。
     斎はこころに決めている。高良にもしものことがあったら――万が一、命を落とすようなことがあったら、歯を食いしばってやるべきことをやり、後の伝い手にすべてを託す。そして、高良のもとへと戻り、魂を捧げる――死まで添い遂げる覚悟ができていなかったら、こんなことはしていない。
     十八年前、手を繋ぎ合い、空高く立ち上る白い雲を見上げながら、海まで続く乾いた道を走り続けた。あのときから、こうなることは決まっていたのだ。高良の血と、自分の血が混じり合ったあのときから。
    「俺は……おまえとずっと一緒にいる、最期までそばにいる……、『次の世界』でも、また会えるって信じてる」
    「ああ、俺もそう信じてる」
    「だから、おまえのものにしてほしい。俺の中で……射精して……」
    「……バカ、煽るなよ」
    「いい、光司だったらなにをされても……、ッ……、……あ!」
     正直な斎の告白に苦笑いした高良が真剣な表情になったかと思ったら、そそり立つ肉棒で再び挿し貫いてきた。
    「く……っぁ……あぁっ」
     突きまくられてもう痛いぐらいなのに、それを上回る快感に意識がどろどろに蕩けていく。高良の雄のかたちがいつまでも残ってしまいそうな、激しい挿入だった。重く、狂おしい快感の中へ意識ごと叩き込まれるような獰猛な抜き挿しに耐えきれず、斎は高良の首にしがみついた。
    「んぁ……あ、あ、いく、ぅ……っ、光司、……一緒に、いきたい……っ」
    「わかってる」
     くちびるが触れ合った。ありふれた愛の言葉以上の熱情が、くちびるから、こころの中へとまっすぐなだれ込んだとき、斎は掠れた声を上げて達した。ほぼ同時に高良が舌を絡ませながらぶるっと頭を一度振り、おびただしい精液を斎の中へと放つ。
    「あ……、は……あっ……」
     どくどくとほとばしる高良の熱い精液で、身体中濡らされていくことがたまらなく嬉しい。
     まだ息が荒い高良の背中を撫で、「……ずっと」と呟いた。
    「ずっと、光司とこうしたかった……。やらしい意味じゃなくて、その……俺が、おまえのつがいだってことを、もう一度ちゃんと知りたかったんだ」
    「おまえの頭から足の爪先まで、俺のものだってわかったか?」
    「うん、わかった。……ありがとう、光司。俺をつがいにしてくれて、ありがとう。嬉しい。……光司?」
     高良が参ったとでも言うようなため息をついて、きつく抱き締めてくる。
    「おまえには心底惚れてるよ」
    「俺もだよ、光司」
    「じゃ、もう一度だ」
    「……え」
     まだそんなに時間が経ってないのに、身体の内側にある高良のものがむくりと跳ねて、斎の熟れきった粘膜を押し上げる。
    「朝までって……本気か?」
    「俺が嘘を言ったことがあるか?」
     目と目を合わせ、互いに笑った。それから、もう一度、深い熱に沈むためのくちづけを互いに求め合った。

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