2019年 年頭のご挨拶

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    新年あけましておめでとうございます。

    昨年もいろいろと楽しく仕事をさせていただきまして、無事新しい年を迎えることができました。

    2018年、あっという間でしたね。かなりオメガバを書かせていただいたり、メリバとハピエン50/50というところだったのではないでしょうか。

     

    あまり意識して書いてないのですが、自分なりに普通のしあわせを書こうとするとちょっとメリバになる感じです。

    恋は平等ではなくて、より強く思い込んでいく執着的な感覚が好きなので、今年もそういう話を挟みつつ、もりもりと書いていきます。

    周りから見て「あーこいつらふたりで自爆か……」みたいなのが一番好きかも。死にネタは悲しくなるけど、駆け落ちエンドというか失踪エンドとか好きかも。

     

    どうでもいいことなんですが、なんでもはいはいと聞いちゃう性格も良し悪しだなと思う昨年だったでの今年は熟考するようにしたいです! たまには断る勇気も大事です。

     

    私生活は、昨年初めて台湾に行けてすごくすごく楽しかったのがきっかけになったので、より遠いところへどんどん出かけていきたいです。

    スーツケース大きいの買った(形から入るタイプ)。

    S/M/Lと3サイズあるので、どんと来いです。英会話もちょこちょこやり直してるけど、ううん自信は正直ありません。それを鍛えるためにも海外に行きたい。

    今年は2月に香港に行きまして、できれば6月頃に台湾行って、秋にはアメリカに行きたい……どうでしょう。友だちとの原稿合宿も随時行っていく所存です。

     

    キーボードを叩く音がやかましいと言われました笑 ガタガタすごすぎて圧を感じるらしい。マジで? コワーキングスペースでうるさいことになってないだろうかとちょっと心配です。外で原稿を書くときイヤホンしちゃうため、あまり自分のキータッチ音を聞かないので……でも景気よくカタカタッターン!てやってます。

     

    ロリータは3年生ですたぶん。ですよね……? 4年生???

    今年は個人的に、新生メイデンに期待するところと、相変わらず飛び道具のプリティに絞ろうと思います。いろんなものを着てみた結果、この2ブランドのシルエットが好きだな〜と感じたのでした。

    プリティは1回着ちゃうとほんとバレバレな派手さなんですけど、そこもまるっとしつこく何度でも楽しみたいたいです。

     

    猫は羽根も華男も元気です! 私も元気に大人になっていきます。

    2019年が皆様にとってよりよく、健やかで楽しいものとなりますように。

    今年もどうぞご愛読のほど、よろしくお願い申し上げます。


    12/29 C95「つよいこ」

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      12/29コミックマーケット95

      配置 西1ホール れ30b「つよいこ」(※サークル名が以前とは変わっております)

       

      ☆無配ペーパー以外はすべて18禁です☆

       

      ☆新刊

      「まだ他人同士ですか」(「他人同士」「誓約のうつり香」MIX番外編)18禁 500円

      最近物思いに耽っている暁。彼を心配するもののうまく聞き出せずもどかしい諒一だが、「他社から仕事をオファーされて……」と思わぬ告白を受けて動揺し……? という内容で、チカや南も混ざってくるわいわいラブエロです。2カップルぶんのすけべがあります。

      ※書店委託はコミコミスタジオ様にお願いしています。電子版はフロマージュ様にお願いしています。

       

       

      ☆既刊(すべて18禁、商業誌の番外編です/在庫僅少もあります)

      「さよなら天国」(リンクスロマンス『毒の林檎を手にした男』番外編)400円

      「Re:他人同士」(『他人同士』)1000円

      「オメガの休暇」(『オメガの血縁』)500円

      「あなたのすべては俺のすべて」(『黒い愛情』)300円

      「夏の大人同士」(『大人同士』)300円

       

       

      ※ブリリアントプリン様より好評発売中のリーディングCD「今宵、義兄とアバンチュール」の甘いSSペーパーを先着順でお配りします。

       

      ※本人直参ですがひとり対応のため、途中もしも混雑することがありましたらご容赦くださいませ。

       

      ※朝一番の高額紙幣はご遠慮くださいませ。

       

      ※サンプルは折り畳み記事に。


      10/21 J庭45

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        ※今回のみサークル名が「星くず」に変わります※

         

        配置:Bホール う09a 「星くず」

         

        新刊:「さよなら天国」400円 18禁(リンクスロマンス『毒の林檎を手にした男』番外編)

         

         

        オメガであり教師の早川、そしてアルファであり元教え子の中臣は、由喜という愛息とともにしあわせな日々を過ごしている。
        そこへ、中臣父からの急な呼び出しがあり……?というハピエンです。

         

        ☆既刊(すべて18禁、商業誌の番外編です/在庫僅少もあります)

        「FUNNY GAMES」(『共喰い』)400円

        「ふたりのバカンスも男の娘」(『ウィークエンドは男の娘』)500円

        「パパとあのことかわいいあのこ」(『パパと呼ばないで!』)300円

        「オメガの休暇」(『オメガの血縁』)500円

        「あなたのすべては俺のすべて」(『黒い愛情』)300円

        「天然ビッチ」(『純情ビッチ』)100円

        「手枷、足枷、それから」(『3シェイク』)300円

        「夏の大人同士」(『大人同士』)300円

         

         

         

        ※11/30発売予定のリーディングCD「今宵、義兄とアバンチュール」(ブリリアントプリン様)のフライヤーを配布します。

         

        ※いつものように、新刊ご購入の方に先着でサイン本をプレゼントします。中身はお任せくださいね。

         

        ※本人直参ですがひとり対応のため、途中もしも混雑することがありましたらご容赦くださいませ。

         

        ※朝一番の高額紙幣はご遠慮くださいませ。

         

        ※サンプルは折りたたみ記事に。

         

         

         

         


        電子書籍のお取り扱いについて

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          以下のサイトで、完売している同人誌のダウンロード販売を行っております。

          ぜひご利用くださいね。

           

          ☆ブックウォーカーさん

          「あなたのすべては俺のすべて」(「黒い愛情」番外編)400円

          準備中「FUNNY GAMES」(「共喰い-αの策略-」番外編)

           

          ☆ガールズマニアックさん

          「あなたのすべては俺のすべて」(「黒い愛情」番外編)400円

          準備中「FUNNY GAMES」(「共喰い-αの策略-」番外編)


          8/11夏コミと8/19インテについて

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            8/11夏コミと、8/19インテのお知らせです。

             

            8/11 夏コミ 西2あ-27b 「Cult7」(オリジナルJUNE)

            お疲れ様でした!

             

            8/19 インテ 6号館Dも-70a 「Cult7」(A3!)

            ☆インテには夏コミ新刊「FUNNY GAMES」少数、

            万至の新刊「妻になるひと、千ヶ崎至」

            既刊の万至「その気になったら屋上で」

            既刊の臣太「初めてのxxx」

            を入れます。

            今回オリジナルJUNEの既刊は搬入しません。

             

            ☆おねがい☆

             

            ※朝一番の高額紙幣はご遠慮下さいませ。

             

            ※すべて18禁ですので年齢確認をする場合があります。

             

            ※8/19大阪インテは搬出の箱数があらかじめ決まっているので、すべての差し入れをお受け取りできません。お気持ちだけありがたく受け取ります♥

             

            ※混雑時でなければサインをいたしますので、お気軽にお申し付け下さいね。

             

            両イベントとも、あまり暑くならないとよいですね……!

            お声がけしていただけるととても嬉しいので、ぜひスペースにいらして下さいませ。

            こころよりお待ちしております。

             

             

            ☆☆新刊「FUNNY GAMES」サンプルは記事の続きからどうぞ☆☆


            烈火の誓い(後編)

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              【烈火の誓い 前編】

               

               悶々とした熱が身体の奥にあることを忘れかけたのは、夕暮れどきだ。素晴らしい快晴で、沈んでいく太陽を邪魔する雲はひとつもなく、斎は高良と手を繋ぎ、荘厳な夕暮れをただただ見つめていた。
               人間がどんなに頑張っても、こんなにも胸に染み込む感動はつくれない。そう思うが、少なくとも、この光景の中に自分と高良がいられることは素直に嬉しかった。
               昼間の一瞬の情事が嘘のように思えるが、掴まれた手から伝わる熱が、――あれはほんとうにあったことなんだと教えてくれる。
              「夕食、どうしようか」
              「昼間、スーパーマーケットで買ってきた刺身があるだろ。あれ食おうぜ。俺が味噌汁をつくるから、斎はメシの用意をしてくれ」
              「うん、わかった」
               東京のように電気炊飯器を使うのではなく、プロパンガスしかないここでは、鍋で飯を炊く。焦げてしまわないかどうか心配だったが、運よくちゃんと炊くことができた。
               虫除けの蚊取り線香を縁側に置いて網戸を閉め、海に面した部屋で夕食を食べることにした。
              「いただきます」
              「いただきます、……うん、うまい、このメシ、よく焦がさなかったな」
              「ずっと鍋の前で見張ってた。光司がつくってくれた味噌汁も、おいしい。こっちの味噌汁って具が一杯入ってるんだよな」
              「これに慣れると、東京の味噌汁がもの足りねえんだよなあ」
              「刺身もおいしい。新鮮なのを買ってきてよかった」
               テレビがないから、ふたりだけの会話が唯一の音だ。それと、波音と静かな潮風。緊急用のラジオはあり、ちゃんと受信することを確かめたあとはスイッチを切り、自然の音に浸ることにした。
              「こういうの、いいな……。普段は必要以上にたくさんの音の中にいるんだってことが、よくわかるよ」
               夕食を食べ終え、斎はごろりと畳に寝そべる高良のそばに腰を下ろした。
               神に祝福された島に、いま、高良と自分のふたりしかいないということが不思議と怖くなかった。
              「おまえの……つがいになるって覚悟を決めたからかな。前に会社のひとたちと来たときは、自然の脅威に押されて怖い思いをすることが多かった。でも、いまは違う」
              「落ち着くか?」
              「うん。できれば、もうここに住んでしまいたいぐらい」
               そう言うと、寝返りを打ってこっちを向く高良が可笑しそうに肩を揺らす。
              「一週間もすりゃ飽き飽きして、都会に帰りたくなるぜ」
              「そうかな。俺は結構本気でここにいたいって思ってるんだけど」
              「まだ、いまは早いだろ。一日海を眺めて、拝所に水を供えて、また海を見るってえ生活は、隠居後にやれ」
              「この島出身のおまえがそんなこと言うのか?」
               くすくす笑うと、ひょいと身体を起こした高良が、「そうだ」と頷く。
              「ちっぽけな島で自然とだけ向き合って暮らしていきたいっていうのは、確かに憧れるよな。でも、台風が来たらひとたまりもねえし、助けも呼べない。まだ俺もおまえも達観できるような歳じゃないだろ。嫌になるぐらい、まだまだ大勢の人間の中で揉まれておいたほうがいいんだ」
              「俺と同じ歳なのに、光司ってたまに……」
              「なんだよ、年寄りじみてるって言いたいか?」
               近づく顔にどきりとして、「違う」と首を振った。
              「俺より、ちゃんと物事を見てるって感じがする。そういうところ、好きなんだ」
               するりとこぼれた本音に、高良はわざとらしいため息をつく。
              「……おまえ、天然だよなぁ。俺のほうが制御しなきゃいけねえのに、引きずられる」
              「光司?」
              「来い。拝所に行く」
              「え……」
               突然腕を掴まれて、とまどった。島の聖域である拝所は森の中にあり、ハブが出やすい夜になって出かける場所ではないことは高良も知っているはずだ。だが、長靴を履かされ、懐中電灯を持たされて、断れなかった。
              「こんな時間に拝所に行ってどうするんだ? ……あ、水をお供えするのか?」
               背丈ほどもある草むらをかき分けて先を歩く高良の背中に問いかけても、答えは返ってこない。
               森の中に入ると、浜辺とは違うひんやりした空気が広がっていた。夏の夜だが、ほんの少し寒さを覚えるほどだ。
               先を行く高良が手を繋いでいてくれたせいで、迷わずに拝所へとたどり着いた。
              「入れ」
               背中を押されて中に入ったとたん、足が竦む。
               室内は真っ暗だ。それよりもなによりも、初めてここで高良と契りを交わしたときの強烈な興奮がありありとよみがえってくる。
              「光司……まさか……」
              「昼間の続きだ。ただし、今度は最後までやる」
              「……最後、まで」
              「何度もおまえと交わる。朝までずっとだ」
               低い声に、ずくんと身体の奥が疼く。高良がろうそくに火を灯し、部屋の隅に置く。とろみのある小皿も布団のそばに用意され、疼きがますますひどくなっていく。
               ――あれは媚薬だ。この島だけに伝わる薬で、俺はあれを塗り込められると、たまらなく疼いて、いつまでも光司を欲しがってしまう。
               拝所の奥の部屋には、すでに一組の布団が敷かれていた。きっと、数日前にここに訪れた島の住民によって整えられたのだろう。彼らは、ここでなにが行われるのか、知っているのか。男同士で島の秘密を守るために身体を深々と繋げる行為は荒っぽさと生々しさに満ちていて、都心のホテルやマンションの一室でするようなスマートなものではない。冷房もない場所で、汗を拭うために用意されているのは水が入ったポリタンクと何枚かのタオルだけだ。
              「斎、俺の前に立て」
               真っ白な敷布でくるまれた布団の前で、斎はうろたえながらも命じられたとおり立った。同じように立った高良がシャツのボタンをはずしてきて、肌をつうっと舐めていく。
              「光司……なにして……」
              「いいから、おまえは立っていろ」
              「ん……」
               高良は丁寧な指遣いで服を脱がしていき、あらわになった斎の肌を舐め回す。
               昼間、無理やり抑え込んだ熱が一気に暴走してしまう。くすぐったい脇腹も、背中も舐められ、膝ががくがく震え出した。
              「ちゃんと立ってろ」
              「でも……!」
               つらい、と小声で頼み込むと、「俺の肩に捕まってろ」と言われたので、きつくしがみついた。高良は構わず、斎の臍を舐め、パンツと下着をゆっくりと引き下ろしていく。内腿の一番やわらかな部分を舐められ、びくんと性器が跳ね上がった。高良の舌は剥き出しになった尻の狭間にまで忍び込み、斎が啜り泣いても止めない。勃起した性器はそのままに、熱く濡れきった舌が尻から腿へ、膝へ、くるぶしへ、そして足の指にまで伝っていく。
              「あ……」
               裸にされ、高良の舌ですべてを舐め回されることに陶然となり、高良の名前を何度も呼んだ。きついほどに昂ぶる性器に触ってもらえないのが苦しい。
              「どうして、こんな、こと……」
              「俺のつがいを俺の舌で清めるのは、当たり前のことだろう?」
               全身、高良の唾液でぬめぬめと濡らされてどうしようもなく恥ずかしい。だが、高良にされるがままでいいのだろうか。前はしきたりに従って高良に抱かれる一方だったが、昼間、身体に灯された淫蕩な炎が力を増し、斎を奮い立たせる。
              「俺が……おまえのつがいで……花嫁だっていうなら、俺にも、……同じことをさせてほしい」
              「おまえにできるか? 俺を舐め回せるか?」
              「できる、――したいんだ」
               せっぱ詰まった声で頼み込むと、高良が薄く笑いながら立ち上がる。
               傲岸不遜に仁王立ちする男のどこから舐めようかと思い悩んだが、――同じようにしてみようと、シャツを脱がしたところから懸命に舌を這わせた。自分よりも逞しい身体の男を愛撫するのは、並大抵のことじゃない。強く出っ張った鎖骨の硬さを確かめるために噛み、灼けた肌、胸にもくちづけた。下着を脱がすと、ぶるっと大きく亀頭が跳ね出て思わず腰が引けそうだが、なんとか堪えてひざまずき、胸に溜まる熱い息を吐き出しながら腰骨を舐めた。尻にもつたなく舌を這わせて、地面に頭を擦りつけるような格好で足の指一本一本を丁寧にしゃぶった。
              「光司……」
              「なんだ」
               膝立ちで高良の腰にすがりつき、斎は狂おしい疼きを懸命に堪えながら言った。
              「光司のここ、……舐めても、いいか」
              「舐めたいのか? 俺はまだおまえにそこまでしてないが」
              「舐めたいんだ。なんでだか、わからない……。でも、おまえのここを見てると、頭がおかしくなりそうで……いいか? 俺から奉仕するのは掟にそむくのか?」
              「いいや」
               高良が口の端を吊り上げた。
              「それでこそ、俺のつがいだ。二度目の交わりでは、つがいから奉仕を求めるのが島の掟だ。……斎、俺を感じさせてくれ。あとで、おまえをうんと可愛がってやる」
              「ん……」
               高良を求めること以外、もう、なにも考えられなかった。男同士で交わることの異常さより、高良とまたひとつになれる嬉しさが勝ち、斎をのめり込ませた。
              「……っん……こう、じ……の、ここ、おっきくて、一度じゃ、はいらない……」
               極太の男根を両手で握り、先端からそっとくちづけて割れ目を丁寧に舐めた。熱く勃ち上がる高良のそれは筋が太く浮き立ち、濃い繁みにまでとろみが伝い落ちていく。自分のそこよりもずっと濃く生えた繁みを舌でかき回し、重たく引き締まる陰嚢にちろちろと舌を這わせていたが、しだいにその熱量をじかに確かめたくなってきて、思いきって口に頬張った。
              「ん……ぅ……」
               丸めた舌で陰嚢をくるみ込み、にちゅり、にちゅりと舐り回しながら、竿を両手で扱いた。
               こんなにも激しい口淫をしたのは、初めてだ。性欲が薄く、潔癖なほうだと斎は自認しているが、高良を相手にするとすべてが変わる。
               前にこの島に来たとき、一度だけ高良のほうから口淫を強いられたことがあったが、あのときと今夜はまったく違う。なかば無理強いをされたあのときとは違い、今夜は、自分の中の潜む淫蕩の塊を覆う硬い殻をみずからはがしていくような感覚だ。
              「光司……光司……っん……」
               呻きながら高良の肉棒を咥え込み、頭を前後に振りながら舐めしゃぶるあいだにも、ぎりぎりまで昂ぶった淫蕩が肌を突き破ってしまいそうだ。高良もそれに気づいているのだろう。
               全裸で仁王立ちしたまま斎の頭を鷲掴みにし、おのれの猛りで思う存分、口腔を犯してきた。
               ろうそくの灯りで浮かび上がる淫猥なふたりの姿はぼんやりと壁に映し出される。床に膝をついて男のものを口で愛する斎と、その様子をじっくり眺める高良の行為は、ほんとうの意味での交わりだった。戯れに他人の身体に触れて一瞬の熱に酔うのではなく、血を分け合うほどの濃さで求め合う姿はかぎりなく獣に近い。
               張り出した高良の亀頭で敏感な上顎の内側、頬の内側を擦られるたびに、性器がひくん、ひくんとしなり、濡れる感触がする。
              「ん――ん、……ぁ……っ!」
               精一杯口の奥まで含んだ瞬間、頭を掴まれて、引き離された。たったいままで、口の中一杯を大きな塊が占めていたのに。突然の空虚感に襲われてためらっていると、高良が布団に寝そべり、斎にまたがるよう命じてきた。
              「どう、すれば……」
              「そのまま、俺の顔まで近づけろ。しゃぶってやる」
              「こんな格好で……するのか?」
              「嫌か?」
               臍まで勃ち上がった性器をやんわりと掴まれてしまえば、拒めない。ああ、と熱っぽい吐息を漏らしながら、斎は恥じらいながらも高良の言うままに彼の顔の上にまたがった。
              「んっ、んっ……あぁ……っ」
               高良の愛撫は濃密で、的確に斎の感じる場所を押さえてくる。先端をねっとりと舐り、愛液を垂らし続ける先端をくりくりと擦られると、達してしまいそうだ。
               舌先と指だけで性器を際どく昂ぶらせ、斎は、我慢しろという命令も忘れて嬌声を上げていた。
              「や――……いい、あ、う、光司、……や、もぉ、いく――いきたい」
              「だめだ」
              「あ……? あ、あ、光司……!」
               どこに用意していたのか。細く白い布で性器の根元をぎっちりと縛られ、射精をせき止められてしまい、気が狂いそうだ。
              「やだ、いやだ、くるし……い……っ」
              「斎、大丈夫だ。この状態で挿れてやる。おまえは、射精しないで達することを覚えろ」
              「え……あ、あぁ……っ!」
               小皿に盛られた媚薬を指に移し取った高良が、尻の奥深くにまでもぐり込ませてきた。どんな成分なのか知らないが、限界まで高まっていた斎の身体をさらに沸騰させるような快感を生み出す媚薬を、尻の奥の柔肉に丹念に塗り込まれた。
               普通の男として生きていくなら、その場所で感じることはまずない。
               ――でも、俺は違う。高良のつがいになったから、身体の隅々まで分け合うことを許した。
              「やっぱり硬くなってるな」
              「ずっと、……してなかった、から……」
               きつい窄まりに秘薬を塗りながら抜き挿しされる指の感覚が、刻一刻とはっきりしていく。
              「自分でここに指を挿れたことはしてなかったか?」
              「しない、そんなの、してない……! もう……や、や、こうじ……ぃ……っ」
               じゅぽじゅぽと音が響くほどに指で犯され、斎はよがり狂った。まだ高良の顔の上にまたがったままだったから、根元を縛られて充血する性器も隠すことができなかった。
              「ああっ……!」
               尻の孔を指で犯されながら、性器を舐めしゃぶられ、もうどうにもならなかった。達しようにも達することができない苦しさと、いままでに味わったことのない強烈な快感が渦巻き、はっ、と大きく息を吸い込んだ瞬間、身体の奥のほうでふくれ上がっていた熱の塊がいきなり弾けた。
              「あ……あ……あ……」
               射精もしていないのに絶頂感を味わい、気が遠くなりそうだ。なのに、尻を犯す指の感触はやけにはっきりしているし、性器も硬度を保ったままだ。疼きっぱなしの胸をどうにかしてほしくて、息を荒らげながらせり出すようにすると、ぐるっと身体の位置を変えた高良が両脚を抱え上げ、膝頭を窮屈なまでに胸に押しつけてきた。
              「いい身体になったな、斎。おまえのここは、俺の指のかたちを覚えてまだひくついてる」
              「んんっ……!」
               ひくひくと開いては閉じて、高良を誘うような淫猥な孔の周りを指でそうっとやさしくなぞられ、気が変になりそうだ。さっき、あれだけの絶頂感を味わったばかりなのに、このあと高良自身を受け入れたらどうなってしまうのか。
               まだひくつきがおさまらない窄まりに、猛った屹立の先端がぴたりと押し当てられた。無意識に腰をずり上げたが、逃げることを許さない男のぬぷっと硬く熱い感触に息を飲んだ。
               高良の怒張が、恐ろしく、ゆっくりとねじり刺さって、挿ってきた。
              「あ……っ……あぁ……っ!」
               白い布で縛られたままの性器がびくんと蠢き、とろみをこぼす。底のないドライオーガズムを斎は味わっていた。高良のものは太く、長く、すべてがおさまるまでに時間がかかる。同じ人間の身体の一部とは思えないほどの熱と硬さを持ったものが脈打ちながら、自分の中へと挿ってくる一瞬一瞬が克明に記憶に刻まれる。こんな快感を一度でも味わったら最後、二度と他のものでは満足できなくなるだろう。経験が少ない斎でさえ、そうとわかった。
              「……おまえは、俺のつがいだ。永遠に繋ぎ止めてやる」
               言うなり、高良が激しく動き出した。斎の両手を掴んで押さえ込み、圧倒的な熱を誇る肉棒で乱暴に突き上げてきた。
              「あぁっ、あぁっ」
               乱暴に揺すり立てられることで、高良も懸命に我慢していたのだと斎は知った。肉と肉が蕩け合う。みっちり奥まではまった男根できつく抉られるほど、斎の粘膜はやわらかに蕩け、高良を引き留める。意識してやれることではない。ただもう、身体が高良に素直に反応しているだけだ。息するのが苦しい姿勢で高良を受け入れ、根元までぐっぷりと埋め込まれると、互いの繁みと陰嚢が軽く擦れる。
              「いい……光司……っんぁ……あぅ……っあっ……」
               無我夢中で繋がる部分を指で触れ、互いの繁みがもつれてしまうほどにかき回した。その仕返しだというのか、高良が胸に齧り付いてきて、熱を宿したままの乳首を吸う。
              「……っん、も……ぉ……だめ……こわれる……っ」
              「壊れろよ」
               獰猛な腰遣いを続ける高良がこのうえなく甘い声で囁き、性器の戒めをほどいてくれた。
              「ああ、いい、イく……っ」
               身体をしならせてどっと精液を噴きこぼす斎は、痴態を抑えられないことにしゃくり上げた。それでもまだ、高良が中にいる。斎自身も、一度味わったドライオーガズムが身体中に染み渡っていて、そう簡単には冷めることができなかった。
              「うしろを向け、斎」
              「ん――ぁ……っ」
               尻を高々と掲げる格好を強いられ、高良のものがずくんときつく背後から挿ってきた。そこでさらに媚薬が塗り込められ、熱くてたまらない。獣の交尾のように、敷布がよじれてぐしゃぐしゃになるほど突いて突いて突きまくられ、何度いったのかわからなかった。しまいには自分から尻をくねらせ、高良の感触を肉洞一杯に覚えようとしていた。
              「光司……」
               掠れた声で呼ぶと、高良に横抱きされて、微妙な角度で突き上げられた。
               正面には、最初の交わりのときにもあった、あの大きな鏡が飾られていた。あのときよりもずっと深く、ずっと奔放に乱れる今夜の自分の身体は想像以上の熱とやわらかさを持ちながらも、硬い骨で高良を支える。
               ろうそくの炎で炙られるような、強い疼きがさっきからずっと止まらない。
              「見ろよ……前よりずっといい顔だ。おまえの中が熱すぎて、俺に吸い付く」
              「ん……あぁ……」
               うながされた先の鏡に、片足を大きく広げさせられた自分が映っていた。横抱きにされ、高良のものを尻の奥までずっぷりと咥え込み、ずるぅっと抜かれそうになるたび、泣き声に近い喘ぎで引き留めてしまう。しつこく擦られまくってねっとり蕩けた粘膜が高良のものに巻き付き、もっと深いところへ、もっと奥までと誘う。
               ろうそくの灯りがふたりの身体を淫猥な赤に染め上げていた。横抱きのまま、顔を掴まれてくちづけられた。
              「ん――ふ……ぅ……っ」
               とろとろと唾液を交わし、舌を搦めてきつく吸い合う。くねる舌先を互いに見せ合いながらくちづけ、呼吸さえもひとつにしたいという高良の情欲に煽られ、斎はたまらずに口走った。
              「お願いだから――光司、俺の中で、……いって……俺の中に、出してほしい……」
              「斎……」
              「おまえのもので濡らしてほしい。……光司は、俺にしか欲情しないんだろう……?」
              「ああ、そうだ」
               息を吐き出した高良が再び正面から貫いてくる。ずぶずぶと根元まで埋め込み、おのれの猛々しさを斎に知らしめるような、容赦ない動きだ。
              「……だったら、……お願いだから、俺の中で……」
               自分のものとは思えない淫らすぎる言葉に、頬が熱くなった。
              「孕みたいか?」
              「……ん……」
               涙が滲む目元を、高良がくちづけてくれた。
               高良の尽きない愛情を、魂を、この身体の中に孕ませたい。「伝い手」にもしものことがあったら、なにもかも受け継ぐのが、「つがい」の役割だ。
               斎はこころに決めている。高良にもしものことがあったら――万が一、命を落とすようなことがあったら、歯を食いしばってやるべきことをやり、後の伝い手にすべてを託す。そして、高良のもとへと戻り、魂を捧げる――死まで添い遂げる覚悟ができていなかったら、こんなことはしていない。
               十八年前、手を繋ぎ合い、空高く立ち上る白い雲を見上げながら、海まで続く乾いた道を走り続けた。あのときから、こうなることは決まっていたのだ。高良の血と、自分の血が混じり合ったあのときから。
              「俺は……おまえとずっと一緒にいる、最期までそばにいる……、『次の世界』でも、また会えるって信じてる」
              「ああ、俺もそう信じてる」
              「だから、おまえのものにしてほしい。俺の中で……射精して……」
              「……バカ、煽るなよ」
              「いい、光司だったらなにをされても……、ッ……、……あ!」
               正直な斎の告白に苦笑いした高良が真剣な表情になったかと思ったら、そそり立つ肉棒で再び挿し貫いてきた。
              「く……っぁ……あぁっ」
               突きまくられてもう痛いぐらいなのに、それを上回る快感に意識がどろどろに蕩けていく。高良の雄のかたちがいつまでも残ってしまいそうな、激しい挿入だった。重く、狂おしい快感の中へ意識ごと叩き込まれるような獰猛な抜き挿しに耐えきれず、斎は高良の首にしがみついた。
              「んぁ……あ、あ、いく、ぅ……っ、光司、……一緒に、いきたい……っ」
              「わかってる」
               くちびるが触れ合った。ありふれた愛の言葉以上の熱情が、くちびるから、こころの中へとまっすぐなだれ込んだとき、斎は掠れた声を上げて達した。ほぼ同時に高良が舌を絡ませながらぶるっと頭を一度振り、おびただしい精液を斎の中へと放つ。
              「あ……、は……あっ……」
               どくどくとほとばしる高良の熱い精液で、身体中濡らされていくことがたまらなく嬉しい。
               まだ息が荒い高良の背中を撫で、「……ずっと」と呟いた。
              「ずっと、光司とこうしたかった……。やらしい意味じゃなくて、その……俺が、おまえのつがいだってことを、もう一度ちゃんと知りたかったんだ」
              「おまえの頭から足の爪先まで、俺のものだってわかったか?」
              「うん、わかった。……ありがとう、光司。俺をつがいにしてくれて、ありがとう。嬉しい。……光司?」
               高良が参ったとでも言うようなため息をついて、きつく抱き締めてくる。
              「おまえには心底惚れてるよ」
              「俺もだよ、光司」
              「じゃ、もう一度だ」
              「……え」
               まだそんなに時間が経ってないのに、身体の内側にある高良のものがむくりと跳ねて、斎の熟れきった粘膜を押し上げる。
              「朝までって……本気か?」
              「俺が嘘を言ったことがあるか?」
               目と目を合わせ、互いに笑った。それから、もう一度、深い熱に沈むためのくちづけを互いに求め合った。


              呪いの言葉

              0

                という話題で書いてみます。

                過去の話ですが、とっても自分語りです。

                 

                以前、いじめられっ子でしたよと書いたことがありましたが、大人になってからの私は結構強気で(とくに雑誌ライター時代)、やりたいことをやれるうちにがんばろ!たのしも!みたいな精神で毎日うきうきでした。もちろん薄氷を踏むような日々もめちゃめちゃありますが、気持ち的には「毎日めっちゃ楽しい〜!」でした。

                 

                仕事も私生活もきわどい感じで、お金もまったくなかったけど、やたらと楽しくて、なにを書いていてもわくわくしていた覚えがあります。夜中の吉野家すら嬉しかった。

                でも、そんな私を見て、ある日尊敬していた方から「あなたって自分を嫌いになったことはないの?」と聞かれました。

                私は愚かにも「はい!ありません」と答えたところ、「平和でいいね。そんなひといるんだ。私なんか私のこと大嫌いだけど」と言われて、どう返せばいいのか言葉に詰まりました。

                 

                 

                 

                ここにはふたつの側面があります。

                ひとつは、ほんとうにほんとうに私が底なしのバカで、品性や知性のかけらもなく、その方含め他人様のご厚意によって生かされていただけのこと。いま思い出しても恥ずかしい時代です。それがわかっただけでもよかったのかもしれません。

                あの瞬間から、「自分が好きだって言ったらだめなんだ、自己嫌悪感がないと大人になれないんだ」と思い込むようになりました。

                もうひとつは真逆で、「自分のこと大好きだよ〜!いまのままで全然大丈夫〜!」って臆面もなく言えた私もいたあの頃です。まだ病にかかる前の話です。

                 

                いまさらそんな昔の話を持ち出しても根深いなこいつという感じなのですが……たまにふっと思い出して、「なんで私こんなに自分のこと嫌いになったんだろ?」と思うと、やっぱり行き着く先はそこなのでした。

                初めて(というわけでもないけど)他人様から性格上のことを指摘されて戸惑い、面食らったこと。仕事の場でも叱られたりなじられたりしたことは数知れずですが、自分の人生に対してプラスしか考えてなかったので、ただもう衝撃を覚えるだけでした。

                 

                でも、そういう変遷がなかったらいまに行き着いていないとも思います。

                くらげのように漂ってなにも深く考えることなく、あの刺のような言葉の意味を探ることもなく、「なにが気に障ったんだろう」と誰の顔色を窺うこともなかったら、もしかしたら小説を書く道は途中で終わっていたかもしれません。

                 

                すべては過去のことだし、記憶も曖昧です。話を大きくしてる気がするな〜というところもあるのですが、わりとのんびりできた今日、つらつらといろんな本を読みながら、あの頃に戻りたいなーと私らしくもないことを考えました。

                過去に戻ってやり直せるなら、あのアホ剥き出しの私に戻りたい。

                いずれ落とし穴があるかもとは思っていたけど力一杯毎日楽しんでたな!という。

                 

                この先、自己肯定力をちょっとずつ取り戻そうと思います。

                やっぱり楽しく過ごせたほうがしあわせだし、わくわくしていたいです。

                精神科医にさえ「あなたは年齢に見合わず幼稚ですよね」と言われた私なので、そこを伸ばしていきたいです笑

                 

                過去にいつまでもこだわらず、のびのび生きていこうと思います!

                今後、ますますバカになっていくと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。


                烈火の誓い(『烈火の契り』番外編)前編

                0

                  「沖縄までの……チケット?」
                  「そうだ。斎、来月頭から一週間ぐらい、少し遅めの夏休みが取れると言ってただろう。俺も夏休みを合わせたんだ。だから、一緒に沖縄に行こう」
                  「だからって、また急な話だな」
                   八月中旬を過ぎた都心は蜃気楼が見えるかと思うほどの暑さに見舞われ、午後二時を過ぎたいま、ティーラウンジの窓の外を歩くひとは少ない。皆、この猛暑にやられてどこか涼しい場所へと逃げ込んでいるのだろう。
                   大里斎はいまさっき渡された沖縄行きの飛行機チケットを見つめたあと、向かい合わせに座る男にちらりと視線を流す。
                   最初に出会ったのは、十八年前。東京からずっと離れた沖縄よりもっと先にある離島に住んでいたのが、高良光司という男だ。十歳のとき、斎は父親に連れられて神喜島というちいさな島に遊びに行った。ひとの手が入らない美しい珊瑚礁と青い海、空、力強い緑に恵まれた神喜島に一目で魅了されてしまったが、過疎化が進んでいた島には子どもが少なく、斎と同じ歳の子どもは光司ひとりだった。ふたりは最初の数分、互いを警戒し合っていたが、斎の目の中に島への魅力を感じ取ったのだろう。『遊ぼうぜ』と灼けた顔で笑いかけてきた光司が手を差し出してきたことで、夢のような一週間は始まった。
                   ――父さんは、よそ者を拒む神喜島の出身だった。そのことを知ったのは、ほんとうにごく最近のことだ。
                   仕事絡みで十八年ぶりに神喜島に渡ることになった不動産会社勤めの斎は、幼い頃の想い出が詰まった島をリゾート開発で豊かな自然環境を壊されたくないために、必死に同行者を説得した。高良も、島の出身者ということで案内役としてメンバーに加わっていたが、彼の左目の下にある泣きぼくろにまつわる謎や、せっかく再会できたのにつれない素振りのわけを追っているうちに、メンバーの不仲がピークに達し、同行者のひとりが毒殺されるという悲劇まで起きた。
                   もう、ずいぶん昔のことにように思えるが、実際のところは一か月ちょっと前の出来事だ。
                  「行くだろ? 斎」
                   鷹揚に足を組み替え、ネクタイの結び目をゆるめる高良独特の骨っぽさは、大勢のひとで賑わうラウンジ内でもひときわ映える。そのことに、なんとも言えないもどかしさを感じて黙っていたが、テーブル下でコツンと靴の爪先をぶつけられ、思わず苦笑してしまった。
                  「わかった。……行くよ」
                  「さっきからなに緊張してんだ。それとも夏バテか?」
                  「違う。光司のスーツ姿、初めて見るから……めずらしくてさ」
                   島で再会したときは、Tシャツにゆったりしたドローストリングパンツというラフな格好だったのだ。あの格好は自然あふれる神喜島だからこそ似合うものだ。ほんとうの高良は環境省に勤めている。精悍な容姿をしっかりと包み込む紺のスーツがしっくりはまっているが、見慣れない姿だけに、やけに意識してしまう。糊のきいた白いワイシャツや、シックな色合いのネクタイは高良の男っぽさをますます強調させている。
                   斎とて、男として端整な顔立ちと引き締まった身体をしており、不動産会社の社員としてスーツは当たり前に着こなしていた。だが、高良の野性味あふれる切れ長の目で射竦められると、ここが都心のティーラウンジではなく、ふたりだけで見つけた神喜島の隠れ場所にいるような錯覚に襲われる。
                   軽く笑い、アイスコーヒーを飲み干した高良がぐっと身を乗り出してきた。
                  「昼間からそういう目で俺を誘う気か?」
                  「誘う? ……違う、そんなんじゃ!」
                  「ふふ、おまえのそういうとこ、いつまでも変わらねえよな」
                   からかわれるように額をつつかれ、恥ずかしさに慌てて身を引いた。
                  「バカ、人前で……こういうことするな」
                  「しょうがねえだろ。俺もおまえも仕事が忙しくて、しばらくぶりに会うんだ。隙があれば触りたくなるのが当然ってもんだろ」
                   さらりと言う高良の言葉をいちいち真に受けていたら、身が持たない。恋人より深い繋がりを持つ自分たちは同じ東京に住んでいても互いに忙しく、たまに夕飯を一緒にすることぐらいが精一杯だった。正直なところ、肌を重ねる暇もなかった。
                  「沖縄本島で一週間も遊ぶのか?」
                  「ま、たまにはそういうのもいいだろ。途中で飽きたら、他の島に渡ってもいいし」
                  「そうだな。うん、楽しみにしてる」
                   笑顔を向けると、高良も「目一杯、楽しもうな」と微笑んだ。


                  「うわあ……いいなあ、やっぱりこっちは太陽が容赦ない。光司、あのへんの浜でちょっと休まないか?」
                  「オッケー。ちょうど昼時か。じゃ、ホテルでつくってもらった弁当、あそこで食べるか」
                  「うん!」
                   全開にしたレンタカーの窓から大自然を楽しんでいた斎は笑顔で大きく頷いた。
                   九月頭の沖縄はまだまだ夏真っ盛りで、どこに行っても眩しい太陽が肌を熱くさせてくれる。それが、斎には嬉しい。オフィス街のこもった蒸し暑さとは違い、沖縄の空気はまっすぐ突き抜けるような暑さだ。いい具合に空気も乾いていて、木陰に入れば結構涼しい。
                   本島のずっと北のほうはわりあいひとが少なく、浜辺も穏やかだ。近くの駐車場に車を停めた高良と一緒に、レンタカーの後部席に乗せていたクーラーバッグやシートを取り出し、サンダルをパタパタ言わせながら浜辺へと下りていった。
                  「このへんなら直射日光を浴びなくてすむだろ」
                  「そうだな、ここにするか」
                   大きくせり出した樹木の下にシートを敷いて並んで座り、高良がホテルに用意させた昼飯が入った箱の蓋を開いたとたん、斎は声を上げて笑ってしまった。
                  「わざわざ、おにぎりをつくってもらったのか?」
                  「そうだ。おかかと、鮭と、梅干し。あと、こっちはおかずだ。唐揚げとたまごやき、あといろいろ」
                   ふたりが沖縄本島で泊まっているのはハイクラスのホテルだ。だから、弁当と言ったらなんとなくサンドイッチのような洋食だろうかと想像していたのだが、いいほうに裏切られた。
                  「こっちのポットには氷詰めの麦茶が入ってる」
                  「準備いいな、光司。いつの間に注文したんだ?」
                  「おまえが昨日、ホテルに着いて、俺に抱きつく余裕もなくいきなりベッドに倒れ込んだあと」
                   日陰でいたずらっぽく笑う高良の言葉に、頬が熱くなってしまう。
                  「しょうがないだろ。ギリギリまで仕事してたんだ。ホントはちゃんと余裕を持って仕事してたんだけど、せっぱ詰まったところでトラブルが起きたんで、出発直前はほとんど寝てなかったんだ」
                  「ああ、いい、いい。とりあえずぐっすり眠れたか?」
                  「おかげさまで。……朝、目が覚めたとき、波の音が聞こえてきたんで、まだ夢を見ているかと思った」
                   おにぎりをぱくつく高良は、「なら、よかったな」と言っているが、斎は彼の隣にいるだけで胸が昂ぶる。自分では制御しようにも制御できない熱を身体の奥深くに高良に流し込まれたのは、神喜島のとき一度きりだ。男同士で都心でデートというわけにもいかず、彼の住んでいる部屋を何度か訪ねたが、運悪く不在が続いた。高良のほうもそうだったようだ。
                  「おまえ、いつあの部屋に帰ってるんだよ。俺が訪ねてもいつもいないじゃないか」
                  「光司だってそうだろ。俺は何度か連絡したし、会いたいって伝言も残したけど、お互い、仕事がぶつかってばかりだったじゃないか」
                  「そうだよなあ……。でも、いまはやっとふたりきりだ」
                   綺麗に弁当を平らげた高良がさりげなく手を掴んできたことで、どくんと鼓動が躍る。自分でもこの反応の早さはなんなんだとなじりたいが、高良の接触はいつだって唐突で、思いがけない重みと熱を残していくのだ。
                  「……光司、おまえ、俺とふたりきりで過ごしたくて、この旅行を計画してくれたのか?」
                  「当然。それ以外になんの理由がある?」
                   周囲にひとがいないのをいいことに危ういまでに顔を近づけてくる高良のTシャツからは、からからに乾いた太陽のいい匂いがする。
                   ――神喜島でも、なんの前触れもなく俺に触れてきた、そして最後にはひとつになった。俺は光司に性的な快感ばかりを求めているわけじゃないけど、でも、こんなふうにされるとどうしていいかわからなくなる。
                   くちびるのラインを際どく人差し指でじんわりなぞられ、自然と誘うように開かされてしまう。「……あ」と斎は掠れた声を上げそうになり、とたんに恥ずかしくなって急いで顔をそらした。それで爆笑するのが、高良だ。
                  「なんだよ、せっかくいい雰囲気だったのに。俺にキスもさせてくれねえのか?」
                  「違う! ……まだ昼間だろ。誰がいつ来るかわからない場所でできるか」
                  「じゃ、夜になったらおまえを貪ってもいいのか。先に言っておくが、俺は前におまえを抱いたあと、ずっと我慢してるんだ。一度お前が肌に触れさせることを俺に許したら、どうなるかわからねえぜ?」
                  「……っ、そういうことは、夜になってから言え!」
                   脱ぎ捨てたTシャツで思いきり高良を引っぱたき、斎は急いで波打ち際まで走った。高良も笑いながら後を追ってくる。サンダルを脱ぎ捨て、ハーフパンツも脱いで水着になったところでざぶんと勢いよく海にもぐった。
                   塩辛い海水が、灼けた肌をゆるく冷やす。海中で、高良が「見ろ」と言うように指さすほうを見ると、真っ青な可愛らしい熱帯魚が群れをなして泳いでいた。少し先の珊瑚礁の陰からは思わず笑ってしまうほどの無愛想な顔をした大きな魚も出てくる。何度も海面に顔を出して息継ぎし、素潜りしては綺麗な海の世界をふたりして楽しんだ。
                  「……すごいよなぁ……、海には海だけの世界があるんだ。陸にいる俺たちよりずっと自由な気がする」
                  「そこが甘ちゃんだな、斎は。海だって弱肉強食の世界だぜ。ここらにはいないが、サメやくじらを目の当たりにしたら、こっちはあまりのちいささにびびるぐらいだ」
                  「だよな。たまに、深海に棲む奇妙な大イカやタコが上がったってニュースを見る。ああいうのを見てると、なんていうか……自由っていうより、海には海独自のルールがあるって気がする」
                  「そういうことだ」
                   濡れた髪をぐいっとかき上げる高良が、大きな手を伸ばしてきて斎の額に張り付いた髪をやさしくときほぐしてくる。
                  「少し休むか?」
                  「うん、結構陽射しがきついもんな。無茶して遊んでると日射病になりそうだ」
                   高良と連れ添って木陰に戻り、冷たい麦茶を飲み飲み、なにを話すでもなく青い海を眺める気分は至福のひと言に尽きる。たまに、うとうとしてしまうぐらいの心地よい風が吹き抜けていく。
                   東京で暮らすのは嫌いじゃない。最新の情報がいっぺんに集まるところだし、次々に新しいおもしろさが体験できる場所だ。
                   それでも、たまに四角いマンションから飛び出し、こんなふうに、なににも、誰にも繋がれない場所で、自分というものを解き放ちたい気分に駆られる。
                  「東京にいると、そういうのが難しいよな。仕事があって、肩書きがあって、世間体があって……まあ、そういう社会的なものはどこにいっても必要だけど、一年に一回ぐらいはこういう場所で、抜け殻みたいな感覚になるのってすごく気持ちいい」
                  「抜け殻? どんなのだ、それ」
                   寝転がってうつ伏せになる高良の背中についた砂を軽く払ってやりながら、斎は笑った。
                  「俺の身体はあくまでも器みたいなもんなんだよ。中に入ってるこころとか、……魂とか、そういうのが、こういうところに来ると、自然と抜け出て綺麗になる感じなんだ」
                  「斎、おまえ、詩が書けるんじゃねえのか」
                   笑っているが、高良も、「俺も同じ気分だ」と言う。
                  「東京でずっと暮らしていくかどうかわからねえけど、たまにはふたりで、ここに来ようぜ。陽射しを浴びてると、東京での悩みとかストレスとか、吹っ飛ぶよな」
                  「光司でも悩みがあるのか」
                  「おまえ、少しは俺を人間扱いしろよな」
                   冗談を言い合い、ほどよく休憩を取ったところでシートを片付け、車に戻った。五泊六日の旅は急ぐものじゃないし、行く先も勝手に変えることができる。高良は安全運転で絶景の夕陽が見られるというポイントまで車を走らせ、そこでもまたふたり、時間の流れを忘れてぼうっと暮れていく空と海を見つめた。
                   沖縄に来てから、腕時計ははずした。時間に急かされるのは嫌だし、陽が昇り、沈むという当たり前の自然の中で、高良と過ごしたかったのだ。
                   一応、レンタカーにはカーナビもラジオもついているから、時刻は確認できる。ただ、ここまで本島のはずれまでやってくると電灯というものはほとんどなく、暮れなずむ空に一番星が輝き、美しい満天の星空になる頃には、あたりはまっくらで、五十メートルも離れていない光司のシルエットがかろうじて見えるぐらいだ。
                  「あ、流れ星だ」
                  「違う、ありゃ人工衛星だろ」
                  「……あ、そうか。なあ、光司、夏の星座に詳しいか?」
                  「そこそこな」
                  「俺、詳しくないんだ。教えてほしい」
                  「授業料として、キス一回だ」
                   バカなことを言いながらも、高良は丁寧に星座を教えてくれた。だが、あまりにも星の数が多すぎて、さっき教えてもらった星座をすぐに見失ってしまう。
                  「そろそろ帰るか」
                   車に再度乗り、ホテルへと戻る高良は落ち着いている。斎は久しぶりに陽に灼けたせいか、肌が火照り、なんだか落ち着かなかった。
                   ――たぶん、光司とふたりきりだからだ。
                   ぎこちない感覚を光司も勘づいていて笑っている気がする。
                   ホテルに戻って交互に風呂に入り、後に風呂を使わせてもらった斎がベッドルームに戻ると、高良はとっくに寝ていた。
                  「なんだよ……キス一回とか、言ったくせに」
                   肩すかしを食らい、穏やかな寝息を立てている高良を恨めしい思いで睨んだ。
                   べつになにかを期待していたわけではないが、せっかくふたりきりでいるのに、手を出さないなんてどういうことだと怒りたくなる。
                   自分から求めることは、まだできない。羞恥心がどうしてもあるし、神喜島の古い掟を守る自分たち――高良は島に眠る財宝と伝承を受け継ぐ「伝い手」という存在で、彼に万が一のことがあった場合、すべての秘密を引き継ぐのが、「つがい」の役目を持っている自分たちが肌を重ねるというのは、ひょっとしたら、特別なときだけなのかもしれない。
                   常識的な恋人より遥かに繋がりが深く、他人ながらも血を交わした関係だ。男だけがなれる「伝い手」と「つがい」は互いの関係を誰にも知られてはいけないという掟もある。神喜島の生き残りでさえ、いまの「伝い手」が誰なのか知らないはずだ。
                   すう、と眠る高良のベッドに座り、頬をそっと撫でた。
                   ――光司が伝い手になる前は、俺の父さんが伝い手だった。でも、父さんは古い島の因習を破って、島の外の女性――母さんと結婚し、俺を生んだ。だから、俺は神喜島にとって中途半端な存在だった。父さんは、「伝い手」の重責をよくわかっていたから、光司に「次の世界」に通じる扉と、財宝の在処を知る「伝い手」になることを頼んだ。
                   ガンで早く死んだ父には生まれ育った島を飛び出した反面、神喜島を愛する気持ちは死ぬ間際まであったのだろう。だから、自分の幼馴染みの子どもである光司に、高良を継いでくれるように頼んだのだ。
                   神喜島には、遠い昔、イギリスあたりから回ってきた海賊が残した財宝が眠っていると言われている。同時に、島で亡くなった者は「次の世界」と呼ばれる場所に行き、生き続けていく者たちを見守るといういわれもある。輪廻転生とは少し違うが、惹き合った魂がまた次の世界でも出会えるように、という、神喜島だけの伝承のようだ。「伝い手」は、「次の世界」に行った者の声が聞ける神子の役目も持っているので、神格化され、島内でひそかに行われる祭りの際にも、仮面と衣装をつけて素性を知られないようにするらしい。
                  「おまえが……そんな重い役目を背負っている以上、俺はなんでもする。父さんの血を継いでいるんだから、俺だって神喜島の人間なんだ。つがいとして、おまえの役に立つなら……」
                   身体をかがめ、高良のこめかみにやさしくくちづけた。
                   交わることをしなくても、そばにいられるだけでいい。そんなふうに思えた。


                   二日かけて沖縄本島をめぐり、「次はどこで遊ぼうか」と海沿いのカフェで話し合っているときだった。
                  「島、行くか?」
                   なんでもないような感じで高良が言うので、「え」と声を詰まらせた。
                  「島って……、石垣とか、宮古とか?」
                  「そこはもう観光客でいっぱいだろ」
                  「じゃ、神喜島に?」
                  「ああ、そうだ」
                  「ほんとうか? ほんとうに神喜島に行けるのか?」
                  「なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
                   くくっと高良が可笑しそうに笑う。この二日間で高良は綺麗に日灼けし、島の男らしい強さを全身に滲ませていた。斎と触れ合うことはいっさいなく、ただ普通に海遊びを楽しみ、沖縄ならではの料理に舌鼓を打っていた。斎もそのことにはすっかり慣れ、――この休みはリフレッシュするためのものなんだ、と思っていた。もともと、性的なことに強いほうじゃないので、なにがなんでも高良が欲しいというわけではない。同じ時間を共有できるだけでも、十分嬉しかったのだ。
                  「行きたかったんだ、もう一度。あの事件以来、次に行けるのはいつかわからなかったし……いつ行く?」
                  「すぐに」
                  「すぐに? え、でも、船はあるのか? あそこに行くには船をチャーターしないと……」
                  「大丈夫だ。知り合いが小型クルーザーを貸してくれることになってる。ホテルに戻って荷造りしよう。残り三日は向こうで過ごすから、食料や飲み物なんかも買おう。斎、覚悟しとけよ」
                  「……なにに」
                   訝しく問うと、濃い色のサングラスを押し下げた高良がにやりと笑う。
                  「島についたら目一杯働いてもらからな。もうすぐ、神喜島じゃ祭りがあるんだ。俺たちはその前準備をするために行くんだ」
                  「……おまえ! 最初から俺をこき使うつもりで呼んだのか!」
                  「当然だろ。おまえも島の人間なん。こういうときぐらいガンガン働け」
                   神喜島の正統な血を引く光司には逆らえない。この旅行がふたりを甘く近づけてくれるものではなく、単に祭りを行う事前準備として島を綺麗にするためなのだとわかってがっくり肩を落としたが、――まあ、いいか、と苦笑した。
                  「島に行きたかったのはほんとうだし、頑張って働くよ」
                  「よし、いい返事だ。とりあえず、スーパーマーケットに寄って必要なものを買いそろえるか」
                   高良の計画にまんまとはめられた、と愚痴を言っている暇があるなら、もういまは誰もいない神喜島がどうなっているかということに想いを馳せたほうがずっといい。
                   島にもともと住んでいた人間は、いまはすべて沖縄本島に移り住んでおり、祭りのときだけ、島に渡る。
                   ホテルをチェックアウトし、数日分の食料と飲み物を買い込んだらすぐにマリーナへと向かい、知り合いに貸してもらったというクルーザーに荷物を運び込んだ。
                  「燃料や、掃除道具はあっちにあるものを使おう」
                  「わかった。……ん、光司、この袋で最後だ」
                  「よし、乗れ」
                   高良の手に捕まって乗り込み、昼過ぎの沖へとクルーザーを走らせた。環境省の仕事上、高良は国内のあちこちに行く必要があり、さまざまな乗り物の免許を持っている。もちろん、船舶免許もある。
                   幸い、波は穏やかで、あまり揺れずに船を進めることができた。
                  「あ……、見えてきた!」
                   嬉しさのあまり、クルーザーを運転する高良の隣ではしゃいだ声を上げてしまった。
                   大小の島々が並ぶ一帯でも、神喜島は一目でわかる。こんもりと茂った緑の山の向こうには、夏らしい真っ白な入道雲が見えた。
                   寂れた港にクルーザーを係留し、高良と交互に荷物を下ろしたあとは、並んで緑の頂と頭上一杯に広がる青空を見上げた。
                  「また……戻ってこられたんだ」
                  「ああ、俺たちが育った島だ」
                   高良の声も感慨深げだった。この島には、たくさんの悲しい過去が眠っている。第二次世界大戦の攻撃をもろに浴び、一時は島のかたちさえ変わったと聞いている。
                   目を閉じて深呼吸すると、十八年前、高良と初めて顔を合わせたときのことがいっぺんに蘇ってくる。緑に守られた清浄な空気も、潮の香りも、頬を撫でる熱い風も、あのときのままだ。
                  「やっぱり、ここを開発しなくてよかった。いつかまた、島のひとたちが戻ってこられる日が来るといいよな」
                  「……そうだな」
                   目を合わせてにこりと笑ったあとは互いに真顔に戻り、「荷物、運ぶか」「だな」と頷き合った。以前、ここに来たときに使った大型の荷車がそのまま港に放置されていた。頑丈なつくりらしく、車輪に油を差すとスムーズに動いた。高良と一緒にハーフパンツから長ズボンに着替え、ぼうぼうに伸びた草を刈り取った。寝泊まりに使う集会所まで汗をかきかき荷車を押し、真っ赤なハイビスカスが咲き誇る浜辺についたときにはぐったりしていたが、パウダーのようなきめ細かい砂浜と、美しいグラデーションを誇る海を目にしたとたん、一気に疲れが吹っ飛んだ。
                   ――帰ってきた。戻ってきた。
                   遮るものがなにもない場所で斎は笑みを隠しきれず、歓声を上げながら浜辺を目がけて走ってうっかりつまずいたところを、「おい! こら!」と慌てて追ってきた高良に捕まえられ、一緒に転んだ。
                  「ははっ、光司、砂まみれだ」
                  「おまえのせいだろう。なに子どもみたいにはしゃいでんだよ」
                   そう言う高良に脇腹をくすぐられて笑い、ふたりしてごろごろと砂浜を転がり、互いの砂まみれの格好に盛大に吹き出した。
                  「くすぐるなんて卑怯だ。俺が脇腹弱いの、光司は知ってるくせに」
                  「斎が隙ありまくりなんだよ」
                   互いに肩をぶつけて笑う。くちびるが触れるほどの距離まで顔が近づいても、くちづけの気配はない。そのことに少し寂しさを覚えるが、そもそも高良とはここを掃除しにきたのだ。
                  「どうしようか。まずは寝る場所を掃除して……拝所も掃除する?」
                  「なにもしなくていい」
                  「え?」
                   髪やシャツについた砂を払っている高良の思いがけない言葉に目を瞠った。
                  「だって、祭りの準備をするんだろ?」
                  「じつはな、掃除はもうすんでるんだ。三日前、島の住人がこの集会所も、あの森の中の拝所も綺麗に掃除してくれている」
                  「じゃあ……俺たちはなにをすればいいんだ? 観光、ってわけじゃないだろうし……」
                   熱い高良の骨っぽい手に顎を掴まれたのは、そのときだ。
                  「光司」
                  「俺と交わるんだ、斎」
                   振り向かされ、高良の炯々とした瞳の底にまぎれもない欲情を見てとった瞬間、身体中が沸騰した。
                  「な……なにを、いきなり……」
                  「祭りの下準備として、秘された交わりが必要なんだ。ここにいる三日間、つがいのおまえは、俺と何度も交わる。俺だけの精液を身体の奥までたっぷり注ぎ込まれて、俺だけしか求められない身体になるんだ」
                  「な……っ! 光司!」
                   真昼の太陽が照らす場所で淫らな言葉を囁かれ、頭までのぼせそうだ。
                  「そんな話、聞いてない……」
                  「当たり前だ。前に、拝所で俺と斎は契りを交わしただろう? あのときと同じ、伝い手とつがいがいつどこでどう交わるか、ちゃんと決まっているんだ」
                  「だから、……東京じゃそういうことをしなかったのか?」
                   鳩尾に力を込めないと、鼻先でくすりと蠱惑的に笑う高良の男らしい色香に負けそうだ。
                  「場所は問題じゃない。時間だ。最初の交わりから一か月以上経たないと、次はできない」
                  「なんで……」
                  「俺のつがいが、ほんとうに俺だけを運命としているか。……俺だけに欲情できる身体になっているか、時間が必要だったから、東京にいるあいだはおまえを抱かなかった。許せよ、これでも結構我慢したんだぜ?」
                   するっと頬を撫で上げる高良の指の感触にさえ甘い官能が忍んでいる。
                  「俺は、おまえを性的な道具として扱ってるわけじゃない。俺たちの交わりは特別だ。そうだろ? 俺には、斎しかいない。斎だけが血を分けた運命の相手だ。俺はおまえにしか欲情しない。だからって、しょっちゅうやりたいって考えてるだけの男と思うなよ」
                  「なにが、どう違うんだよ……!」
                  「つがいは、伝い手のいわば花嫁だ。俺の花嫁として、おまえは俺の精液を受けて擬似的に孕むんだ。互いの精液を混じらせて……身体中に塗りたくって、島に命を捧げることを誓え」
                  「……光司、こんなところで、するのか……?」
                  「もう我慢させるな」
                   砂浜に横たわらされ、大きな影がのしかかってくることに抗えない。シャツのボタンをはずされ、汗ばんだ肌をさらすのがたまらなく恥ずかしかった。
                   まさか、島に来る目的が交わることだとは。こっちに来たときからほとんど触れられなかったから、それならそれでいいと自分をなだめていたはずだったが、そんなのは形ばかりだったのだと、いま、高良の舌が鎖骨の溝を這うことによる快感で知らされる。
                  「我慢しろ、斎。最初のときの交わりを思い出せ。俺がいいと言うまで、ぎりぎりまで我慢するんだ」
                  「ん……ぅ……!」
                   ぬめった舌がとろっと唾液をこぼしながら胸を伝う。まだ、なだらかなままの乳首を高良はくちびるで挟み、ちゅくちゅくと噛みながら吸い上げる。その愛撫が起爆剤になった。胸を愛撫されて感じることを知ったのは、高良のせいだ。花嫁にするというのはあくまでもたとえで、女みたいに胸を弄られても感じるわけがないと思っていたのだが、ちいさな尖りの根元をきゅうっと噛まれ、きつく吸われるたびに全身が震えるほどの甘い痺れが走る。
                  「あ……あ……こう、じ……っ」
                   男の乳首にしてはあまりにいやらしい色を持ち、ふっくらと腫れたそこを高良は執拗に指で揉み込んでくる。男の平らな親指と人差し指でつままれ、ゆるやかに擦り立てられると、まるでそこが性器のひとつになってしまったかのような錯覚に襲われる。
                  「……くぅ……っ」
                   我慢しろ、と命じられたことを思い出し、必死にくちびるを噛んで堪えた。
                   腕に、足にあたる陽射しが熱い。無人島とはいえ、真っ昼間の浜辺で高良と肌を重ねるとは思っていなかったから、斎の意思とは裏腹に身体は素早く昂ぶり、何度も吐息を殺さねばならなかった。
                   乳首をたっぷり吸ってツキンといやらしく尖らせたことに満足した高良が、パンツの中に手をもぐり込ませてきた。
                  「さすがに浜辺でおまえの中に挿れることはしねえよ。おまえのここはまだ硬い。前みたいに媚薬を塗り込めてからじゃないと、おまえに怪我させそうだ」
                  「ん……っ」
                   がちがちに張り詰めたペニスをやさしく扱かれ、「見ろよ」という声にそそのかされてぼうっとした視線を落とすと、パンツの縁から、とろんとした愛液をこぼして真っ赤に充血する亀頭がのぞいていた。先端の小穴がひくひくと開いては閉じ、とろみを垂らしていく。
                  「や……! 光司、……これ以上、ここじゃ……っ」
                  「そう焦るなよ……斎、三日間もあるんだぜ。達するのはぎりぎりになってからだ。それまで何度も何度も追い詰めてやる。おまえの身体が俺のかたちを覚えて――欲しくなって欲しくなってたまらなくなったとき、本音を聞かしてくれたら、いかせてやる」
                  「本音、って……」
                   朦朧とした意識で呟くあいだも高良の手でぬちゅぬちゅと扱かれ、羞恥に歯噛みしたくなるほど、ぐんと反り返ってしまう性器が自分でも恨めしい。
                   ――でも、光司のはこんなものじゃない。あれを突然受け入れるのは、確かに無理がある。
                   以前、口で味わった光司の性器の硬さや熱を思い出し、ごくりと息を飲んだのがわかったらしい。斎の昂ぶりを無理やりパンツに押し込めて、高良が笑う。
                  「いまは、ここまでだ」
                  「そんな……! こんな半端なところでやめるなんて……」
                  「言っただろ? 時間はたっぷりある。俺がおまえの中に挿れて出すだけが交わりじゃねえだろ」
                  「そう、だけど……」
                   声が掠れてしまう。ずきずき痛む下肢から意識をそらすのが難しい。
                  「……俺はどうすればいいんだよ!」
                   中途でやめられてしまったことに怒ると、高良が肩をすくめ、「海で遊んで、熱を冷ますか?」と言った。冗談だろ、と思ったが、楽しげな高良は本気らしい。
                   仕方なくよろけて立ち上がり、浅瀬へと入っていった。太陽に照らされた海水は温かで、急激に強められた快感をゆっくりとほぐしてくれる。
                   何度も深呼吸し、遠い水平線を見つめることでいまさっき高良から与えられた快感を忘れようとした。
                  「ほら、斎、やどかり」
                   ――ひとの気も知らないで。
                   可愛いやどかりを手のひらに載せて差し出してくれる高良を本気で睨み、斎は両手ですくった海水を彼の顔に思いきりぶちまけてやった。

                   

                  【烈火の誓い 後編】


                  とりとめのない病について

                  0

                    ※内面的な話なので、作品と作家を別個にしたい方は読まないほうがいいです。

                     

                     

                     

                    以前も一度、自分の病について話したことがあります。

                    私の病は大雑把に言うと、

                    ・パニック障害

                    ・不眠症

                    ・双極性

                    です。

                     

                    順番としては、仕事による挫折でパニック障害を発症したことで、ほぼ同時期に不眠と双極性を併発した感じです。

                    結論から書いてしまうと、いまも病院には通っていて投薬治療を受けており、症状はだいぶ改善されました。

                    1年のうちで、気持ち的に揺れやすい季節は仕事を入れないか、

                    ゆるい組み方にするかというふうにしています。

                     

                    最近は早寝早起きになったので、24時頃に薬を飲んで耳栓をして就寝。

                    朝5〜6時頃に起きて近くのジムに行き、身体を動かしています。

                     

                    どうしてパニック障害になったかは前にも書いたかもしれないので詳細は割愛しますが、仕事で抜き差しならない場面にぶつかったためです。自分ではコントロールできない困難を乗り越えることがそのときどうしてもできず、息抜きで行ったはずの温泉先で初めて発作を起こしました。

                     

                    で、これをきっかけに、明るいバカだった私がだんだんとこもりがちになり、しだいに疑心暗鬼になっていきます。

                    他人様を妬む、うらやむ、自分への尽きない劣等感。

                    なにをどう頑張っても報われた思いが得られないし、たとえ感じられたとしても一瞬です。

                    安心という感覚から遠く離れてしまい、自信喪失がピークに達したとき、まったく眠れなくなりました。

                    初めての発作から5年ほど経ってやっと病院へ行くことに。

                    なかなか行かなかったのは、恥ずかしいからというのと、周囲の目を気にしたからです。

                     

                    でも眠れないつらさのほうが勝ってしまい、なんとか薬でなだめるように。

                     

                    数年かけて症状はいろいろと変わり、双極性も味わうことになったのですが、身体にきつい痛みが出る時間が長かったのも大変でした。首が痛いのは、いまでも変わりません。これはもう一生付き合うことになりそうなので、ときどき休みを意識して投入しつつ仕事しています。

                     

                    昔からいじめられっ子でした。

                    目をつけられやすいというか。とくに秀でたところがないくせに目立ちたがりで、リーダー気取り。

                    そりゃ鼻つまみものになることも多くなりますよね。

                    中学生の頃のいじめがかなりひどくて、いまでもときどき思い出してつらいです。

                    このへんは形を変え、表現を変え、小説に反映しているところもあります。

                     

                    大人になってからも結構トラブルがあります。

                    一通りのハラスメント的なものは受けているので、いまは、「そうか〜、今回はつらかったよね」と自分をいたわり、こころの中だけではできるだけ自己肯定するようにしています。

                    誰かのせいにするほうが早いし、後腐れないとは思うものの、それではいつまで経っても状況は変わりません。

                    私が招くトラブルの一端は私の中にかならずあります。

                    (いじめられる子にも原因がある論とはまったく違います。私には私だけの問題があるのはわかっています)

                    それを相手が勘づいて、いつの間にか泥沼化するというパターンをあと何度経験すればいいのかと思い悩んだ結果、「こういう(冷たい)自分がいる」と認めることにしました。

                     

                    よく、「エネルギッシュですよね」とか「頑張ってますよね」と言って頂ける場面に当たるのですが、内心ははらはらしています。化けの皮が剥がれそうで。

                    そう見られたいから、あえて「頑張ってます!」と言っている部分もあります。

                    めっちゃ見栄っ張り。自信なさすぎ。他人様から影響受けすぎ。

                    挙げるときりがない欠点がぼろぼろ出てきて、自己肯定からかけ離れてしまうのですが、そういうみっともない自分も自分。

                     

                    この辺はまだコントロールできる部分なので、「ああ〜〜〜いまメンタルやばすぎ〜〜〜」といういうときは勢いよくネットから離れて仕事に没頭するか、ODするぐらい薬に頼るか、筋トレです。

                    あと、ひとと話します。

                    とても一方的な会話の仕方であとからかなり悔やむのですが、いまのところ、この3つの方法でしのいでいます。

                     

                    妬む意識はどうでもいいところにあると自分でもわかっています。

                    わりと早い時期に親を続けて亡くしているので、後戻りがきかない、頼れる場所がないという葛藤がつねにありました。

                    だから、毎年母の日、父の日が来ると憂鬱になります。

                    もう私はなにも贈れないのに、他人様にはまだ親がいる。そのことが羨ましいです。

                     

                    ただ、いまはパートナーがいるので、母の日、父の日部分は「毎年の恒例行事」としてあえて薄目で見ています。

                    やっぱりいいなあとは思うけど。

                     

                    嫌われることが怖いし、にこにこされながら陰口をたたかれているかと思うともっと怖い。

                    だから、ひとりでいたいと思うこともあります。

                    なのに、パニック障害が起きかけるときは信頼している誰かの手を握っていると安心できます。

                    自分はひとりじゃないし、ひとりにされない。

                    こう書いていてなんと幼稚なことかと顔から火が出そうですが、自分の中の「平均」がわからないままいままで来てしまったので、当たって砕けろ精神しかありません。

                     

                    他人様との縁は偶然も強いですが、努力も必要。

                    ただ、過剰なまでのサービスをすることがあるので、「それは友だちとして対等じゃないのでは?」と諭されたことがあり、はっとなった過去があります。

                    対等ってなんだろう、といまでも考えます。たぶん一生考えます。

                    離れたところにいてもこころは繋がっていて、たまに会えたときに「わーい!」てなれたらほんとうに最高ですよね。

                     

                    パートナーとは同じ住居の中にいても別々の部屋で別々のことをしています。

                    その感覚がありがたいし、なにか困ったことがあれば言う。

                    ただ、こういう話をしても全部「ふーん」で流すパートナーなので、必然的に小説では聞き上手な攻めが多くなります笑

                     

                    心地好い関係って、ひとそれぞれ。

                    たいていのことはひとりで切り抜けられるひと。

                    好きなひとと一緒に過ごしたいひと。

                    家族とともに乗り越えていくひと。

                     

                    私はどれにも当てはまらないところがあるので、つねにこころの中にちょっとした暗礁があります。

                    誰かのこころに近づきたいし、知ってみたい。

                    でもそれは同時に自分をも明け渡すことになるので、嫌われる確率も高くなる。

                    いくつになってもこういう悩みって、根っこのところは変わらないと思います。

                     

                    よかったなと思うのは、小説を書くことを仕事にできたこと。

                    現実では叶えられなかったことでも小説の中では成立する。夢があります。

                    ちゃんとオチもあるし、たいていはハッピーエンドです。そういうところに心底ほっとし、安らぎを感じます。

                     

                    一方、カニバリズムに通じる暴力ものや陰惨なものも大好きで、

                    日頃好んで観ているのはホラー映画か胸くそ悪いドラマ、映画です。

                    キャラが私の代わりに「ギャー!!!」と叫んでくれているのが爽快で、よくホラーは観ています。

                     

                    いまはわかりやすいぐらい躁のターンなので、こんなことも恥じらいなく書いております。

                    めっちゃ後悔する日が来そうですが仕方がない。

                    黙れない性分なので、もう、ここだけはしょうもない自分を受け止めて、「いっぱい喋ってしまってごめんね」ということにします。圧をかけてしまうところもあるので、ほんとうにどうにかしたいんだけど。

                     

                    嫌われたっていいのにね。と思います。

                    好きになれない&なってもらえないひとにも必死にすがっている自分が過去にもいて、さすがにかわいそうです。

                    ある意味、使ってもらう、利用されることをよしとするというか……根深い。

                     

                    ひとりで(というふうに見える)行動し、判断し、ちゃんと自分の言葉でいまの考えを伝えられるひとを尊敬しています。

                    私はどうしても自分の本音を伝えるまでに時間がかかり、

                    何度も何度もいやな気持ちを咀嚼して、どんよりしつつこうやっていきなり書くタイプです。

                    め、迷惑だな! 自分でも面倒な手合いだな!

                     

                    なんかほんとうにとりとめのない話になってしまいましたが、双極性にならなかったら書けなかった作品もたくさんあります。

                    自分の中を探るってほんとうに面倒だし、正直いやだし、あまりしあわせじゃないなと思います。

                    でも、なにかのきっかけを自分の中に掴んで形にする作業がやっぱり好きです。

                    夢はあったほうがいいし、叶えられるよう努力もしたいし、もし叶わなかったとしても思いを馳せる時間を持てるのはいいことだよなと。

                     

                    この先どうなるか全然わからないのですが、できれば楽しく仕事していきたいです。

                    そのために、今年は旅好きになります。

                    知らなかったことをたくさん吸収したい。そして、それを誰かと分かち合えるように磨きをかけたいです。

                     

                    言うことは立派ですが、結果がともなうかどうか笑

                    おこがましいですが、どこかの誰かに寄り添える小説が書けたらいいなと思いつつ今日はこのへんで。

                     

                    病も個性です(*´◒`*)

                    読んでくださってありがとうございました〜!

                    そして、もし重い気持ちにさせてしまったらごめんなさい!


                    お財布を落とした話

                    0

                      今日、生まれて初めてお財布を落としました。

                      地元の駅前ATMでお金を下ろしたあと、目的地に向かっている最中、

                      スポドリを飲もうと思ってお財布を探したところ、バッグの中に見つからず。

                       

                      落とした!

                      すられた!?

                      いや落とした!!!

                       

                      暑いしパニックになるしで慌てて来た道を駆け足で戻るものの、見つからず……。

                      免許証も保険証もクレカもキャッシュカードも入っているお財布。

                      なによりエーステのチケットが入っているお財布。

                       

                      最悪の事態を考えてまずはクレカを止めないと、と思いつつ、すがるように駅前交番に入り、

                      「お財布を落としました」と言ったところ、おまわりさんが「まずは落ち着いて、この書類に必要事項を書いてね」ときびきび指示してくださいました。

                      もう慌ててるので字が汚いし、間違うしうぐぐぐぐ……。

                       

                      半分ほど書き終えたところでおまわりさんが、「秀さん?(実際は本名)」と聞かれたので、

                      「はい」と答えたら、なんとその手には免許証が。

                      えっ?

                      ええーーーっ。

                      もう届いてる……!!??

                       

                      とにかく最後まで書き終わり、中身の確認もしました。その間べつのおまわりさんが所轄に電話して、「財布の持ち主来たから」的なことを言っていて、私の財布を出してくれました。

                      「中身を確認してください。一回全部取り出しているので中ぐちゃぐちゃだけど、全部あります?」

                      と聞かれ、急いで確認。

                      ありました。ショップのポイントカードもクリーニングの引換証もありました。

                       

                      安堵感が襲ってきてへなへなしてしまった私に、おまわりさんが、

                      「よかったね。もし今度あなたが誰かのお財布を拾ったら交番に届けてくださいね」

                      とおっしゃってくださいました。

                       

                      拾ってくださった方には所持金から一律のお礼をする、というルールがあるのですが、

                      ご本人はそれを断ったようで、

                      「名前は明かせませんけど、確かに届けてくれましたよ」

                      とのこと。

                       

                      感謝しかなかった……。

                      拾ってすぐ届けてくださったんだろうなあと……。

                      書類を書く手間もあったかもしれないし。

                       

                      ほんとうにほんとうに感謝しかありません。

                      じつはこのお財布、もう替えようかな?と思っていたところなんだけど、

                      このご縁を大事にしてまだまだ遣います。

                       

                      おまわりさんも落ち着いて対応してくださったことで、私はふにゃふにゃでした。

                      おまわりさんにも感謝感謝です。

                      交番の中は冷房が効いていて涼しかった!

                      私が書類を書いている間も落とし物の方がいらしていて、お仕事お疲れ様です……!

                      という気持ちでいっぱいでした。

                       

                      拾ってくださった方、おまわりさん、ほんとうにありがとうございました。

                      この文面がご本人に届くことはないかもしれないけど、

                      あなた様にたくさんの素敵な出来事が訪れることをこころより願っています。

                       

                      同時に、私自身の振るまいについても考えました。

                      今日はちょっとぼうっとしていて気が抜けてました。

                      お財布はちゃんと確認して肌身離さず。

                       

                      そしてここ最近(というかずっとかも)、

                      自分には甘いくせに他人様には厳しい&冷たい自分がいることにも薄々気づいていて

                      悩んでいたので、これを機に、いろいろ見直します。

                      自分なりに、今日与えてもらえた感謝を形にしたいと思います。

                      まずはできることから!

                       

                      原稿頑張ります!

                       

                      お財布戻ってきてほんとうにほんとうによかったよという話でした。

                      拾い主さんには美味しい焼き肉をごちそうしたい……!



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